サスティナビリティ(持続可能性)の観点からも、改革は、もう待ったなしだ。

 

 スポーツ庁の有識者会議は先月26日、公立中学校の休日の運動部活動(ブカツ)を、2023年度から3年かけて地域や民間に移行する提言案を公表した。背景には人口減少や教員の長時間労働がある。記者会見で「今後、平日の地域移行も進めていくべきか」と問われた末松信介文科大臣は「地域の実情に応じた休日の地域移行の進行状況などを検証しつつ」と前置きした上で、「平日も含めた検討が当然行われてしかるべき」と、さらに一歩踏み込んだ。止まらない少子化、教員の“働き方改革”の必要性を踏まえれば、地域への近い将来の“全面移行”は避けられないと見る。提言は今月中に取りまとめられ、室伏広治スポーツ庁長官に提出される。

 

 提言案の中身には、概ね賛成である。しかし改革には抵抗が付き物だ。スポーツの世界においても、それは例外ではない。

 

 現場を取材していて、よく耳にする移行への反対意見を2つ紹介する。まずひとつ、「学校教育の一環」であるブカツに、民間の事業者が参入するのは好ましくない――。その際、反対派が根拠にするのが、1961年に制定された、旧法の「スポーツ振興法」だ。3条2項に、こうある。<スポーツの振興に関する施策は、営利のためのスポーツを振興するためのものではない>。主に学校施設の貸し出しに関するものだが、教育関係者に多いブカツの聖域視は、ここからきているように思われる。

 

 だが、これはあくまでも旧法である。50年ぶりに改正され、11年に成立した新法の「スポーツ基本法」は基本理念で、こう記している。スポーツは<学校、スポーツ団体、家庭及び地域における活動の相互の連携を図りながら推進されなければならない>(第二条2項)。「営利」という言葉は削除されている。

 

 二つ目。ブカツは中学校の学習指導要領にもうたわれており、教員が責任を持って推進すべし――。確かに、その通りなのだが、同時に<生徒の自主的、自発的な参加により行われる>との条文が無視されることはあってはならない。強制的な“全員加入”は法令違反の疑いを招く。

 

 本来、ブカツは学校教育活動であると同時に、教育課程外、すなわち社会教育活動でもある。ところが教育課程の編成基準を告示する文書である学習指導要領に位置付けられ、過度に意義が強調されたことで、その理解を巡って、現場に齟齬が生じている。このあたりをもう少し整理し、噛み砕いて説明しないことには国民的合意は得られにくい。この改革の最大の受益者は、子供たちであるべきだ。

 

<この原稿は22年5月4日付『スポーツニッポン』に掲載されたものです>


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