8日、「NTTジャパンラグビー リーグワン2022 ディビジョン2」順位決定戦第3節が東京・秩父宮ラグビー場で行われた。花園近鉄ライナーズが三菱重工相模原ダイナボアーズを34-22で破り、2勝0敗の勝ち点9でディビジョン2(D2)を制した。相模原DBは0勝2敗の勝ち点1で3位。D1のNTTドコモレッドハリケーンズ大阪が来季はD3に回る見込みのため、花園LのD1昇格が決まった。相模原DBは入れ替え戦へ。D1の10位か11位と対戦する。

 

 花園Lが5シーズンぶりにトップディビジョンへの昇格を決めた。日本選手権3度制した古豪だが、2017年度にトップリーグ(TL)から2部相当のトップチャレンジリーグ(TCL)に降格後、トップディビジョンからは遠ざかっていた。18年度は入れ替え戦で敗れ、19年度はTCLを制したものの、TLの大会中止により入れ替え戦は行われなかった。TCL最終シーズンは準優勝。リーグワン初年度はD2に振り分けられた。

 

(写真:フィフィタ<13>、クーパー<10>、ゲニア<中央>と豪華なBK陣を誇る花園L)

 花園LはD2リーグ戦上位3チームによる1~3位順位決定戦は、相模原DB、花園L、三重ホンダヒートの順で進んだ。第2節までの成績は花園Lが勝ち点5で1位、三重Hが同4で2位、相模原DBが同1で3位と入れ替わっていた。最終節で花園は勝つか引き分け、負けても7点差以内ならボーナスポイントを獲得で、優勝&昇格を勝ち取れる状況。一方、相模原DBは逆転のD2制覇&D1昇格を手にするためには、8点差以上の勝利が必要だった。

 

(写真:片岡はこの日2トライを挙げ、ワクァと共にD2トライ王に輝いた)

 今季リーグ戦2試合では相模原DBが勝利していたが、先制は花園Lだった。前半5分、敵陣左深くでのラインアウトからLOサナイラ・ワクァがインゴールに雪崩れ込んだ。11分にはSOクウェイド・クーパーの飛ばしパスで左サイドに大きく展開。最後はワクァからパスを受けたWTB片岡涼亮がインゴールに飛び込んだ。クーパーはいずれもコンバージョンキックを決め、14-0とリードした。

 

 相模原DBに2トライなどで、一時は4点差まで迫られたものの、33分にクーパーがPGを成功させ、1トライ1ゴール差にリードを広げた。ワラビーズ(オーストラリア代表)75キャップを誇るクーパーの右足が輝いた。40分、敵陣でボールを持つと、右サイドへグラバーキック。弾んだボールが大外のワクァの手に渡る。2mを超える長身のフィジアンは2人をかわすと3人目を弾き飛ばしての豪快なトライ。花園Lは27-15とリードして前半を終えた。

 

(写真:試合終了直後、クーパーはチームメイトに語り掛けた)

 後半は相模原DBの反撃に耐えた。18分に1トライ1ゴールは許したが、28分にCTBシオサイア・フィフィタの突破から最後はクーパーがトライ。コンバージョンキックを決め、34-22とリードを2ケタに戻した。残り10分以上は相手にスコアを許さなかった。そのままノーサイドの笛を聞き、歓喜の瞬間を迎えた。するとクーパーはチームメイトをたしなめるように、両手を上下に振った。すぐにハドルを組み、何かを語り掛けていた。試合後、クーパーは理由をこう説明した。

「特別な一瞬だとは分かっていたが、負けて傷付いているチームが近くにいるし、相手のファンもいる。『我々は勝つべくして勝ったのだから、騒いで喜ぶのはロッカールームに帰ってからでいい』と伝えた」

 

 これで来季はD1を舞台に戦う。就任1年目にして昇格を成し遂げた水間HCはチームのリーグワン初年度を終え、「花園近鉄ライナーズとしていいスタートを切れた」と喜んだ。司令塔としてチームを牽引したクーパーは「これが旅の終わりではなく始まり。D1に居続けなければならないし、更なる努力で成長し、最終的には日本一が大きな目標となる」と先を見据えた。

 

(文・写真/杉浦泰介)