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「あの場所に立ったら、どんなことを思うのか物凄く興味がある」

 あの場所とは、長野県松本市にある松本運動公園体育館だ(写真)

 

 今から25年前、第二次UWFは、この場所での興行を最後に解散してしまった。

 

 松本大会では、トップの前田日明さんをはじめ、選手全員がリング上でバンザイをして、一枚岩の団結力をアピールしたのだが……。あれほど隆盛を極めたUWFが終わってしまうなんて、この時は考えもしなかった。

 

「18歳の若造にとっては、あまりにも残酷な結末だったよ」。僕は当時を回想しながら、電話の相手に静かに語った。やはり25年という節目のせいか今年は特にUWFを意識してしまう。「12月1日は何かアクションを起こしたい気もあるけど……」。いつまでもウジウジと踏み切れない僕の背中を押してくれたのは、この電話の相手である竹馬の友だった。彼とは小中学校からの同級生で、一緒に虫採りやプロレスごっこをやった大親友なのである。

 

「その日は、カキ君(僕の幼少の頃のあだ名)にとって、とても重要な日なのだから、本(Uの青春)も出たことだし、出版記念を兼ねてイベントをやろう!」

 現在、松本在住である彼が、全面協力してくれることでイベント開催が決まった。まさか本当に松本でUを語ることになろうとは……やはり、持つべきものは友である。

 

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 待ちに待った12月1日、早々に松本へ到着した僕は、その足で松本城へと向かった。松本城は、現存する五重六階の天守の中で日本最古の国宝の城だそうだ(写真)。日本最古と知ったからには、天守閣まで登りたくなるというものである。「松本城は、シブくてカッコイイ!」。藤波辰爾さんのような城マニアではなくとも、必見の価値ある素晴らしいお城であった。しかし、僕にとっての国宝級のお宝は、やはりバンザイをしたあの場所だ。

 

「カキ君、UWFが試合をした体育館は、信州スカイパークの敷地内にあるから、そろそろ向おう」。信州スカイパークは、かなり巨大な敷地面積を誇っていた。受付へ到着すると当時の状況を知る職員の方が、体育館まで案内してくれることになった。25年もの月日が経っているというのにUWFを知る方に出会えるなんて、偶然とは思えない幸運を覚える。

 

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「このメインアリーナに4000人もが集まったのですから、今思い出してもUWFはやっぱり凄かったですよ」
 会場を見渡せる2階席に座りながら、その職員の方と話をしていくうちにUWF解散のタラレバ話まで飛び出した(写真)

 

「解散したことは確かに残念でしたが、あれがあったからこそ、PRIDEやK-1が生まれ、今日の格闘技人気につながったのだと思います。そう考えると(解散は)良かったのかもしれませんよ」。なるほど! 確かにそういう見方もできる。僕は、解散してから、ファンを裏切ってしまったとネガティブに考えていた節があるので、この言葉を聞いて救われたような気分になる。今年の年末には、再び地上波で総合格闘技の試合が流されることを考えると、その意見に納得である。

 

 MMAだけでなく、プロレス界に目を向けてみても第二次UWFの解散があったからこそ、Uインターが生まれ、あの新日本プロレスとの対抗戦が実現したのだ。この対抗戦はマット史に残る大ヒット興行となったのだから、ある意味、ビバ解散だったのかもしれない。僕個人も対抗戦に出たからこそ、バリューがアップし、後にジャイアント馬場さんの全日本プロレスやアントニオ猪木さんの新日本プロレスに辿り着くことができたのだ。プロレスの象徴的なお2人から、プロレスを直接学べたなんて、これ以上の財産はないだろう。かつてプロレス少年だった僕の人生は、間違いなく幸せだったと言い切れる。

 

「なんか霧が晴れてきたような爽快な気分になってきましたよ」

 マット界に多大なる影響を及ぼしたUは、あの結末で良かったのかもしれない。心からそう思えるようになった。

 

「よ~し、バンザイしよう」

 

 僕は、25年前にリングが置かれていた場所に立ち、少し照れながらも、ひとりでバンザイをした。きっとUWFに人生を賭け、愛媛から夢を追いかけてきた『垣原青年』も十分に満足したことだろう。それを竹馬の友は、優しい顔で見守ってくれていた。

「鮭のように元にいた川(松本)に戻ってきたけど、これで終わりじゃないよ。次は25年後にまたこの場所で会おう!」

 

 僕のこの言葉に彼もさすがに対応に困っていた。

「えっ、25年後?!……ここまでの長期契約は人生初かも」

 

 でも、僕は本気も本気なのだ。いま僕が活動している『昆虫ヒーロー』ミヤマ☆仮面は、『環境保全』という大きなテーマがある。結果を出すには、これぐらいの時間を要するだろうと見ている。病に打ち克ち、ミヤマ☆仮面としての使命を全うし、成功者として再びこの地を踏みたいと僕は本気で考えているのである。「のんびり構えているわけじゃないけど、きっと時間がかかるはず」。何よりも未熟者の僕は、もっともっと山や川など自然のことを深く勉強しなければならない。それとイベンターとしても子どもたちが喜ぶ『クワレス』をメジャーにしなければならない。この活動の象徴として行なわれている昆虫バトルの『クワレス』は、野性味あふれる闘いの中にも安全性を重視した、いわばクワガタのレスリングなのだ。

 

「もしかして、UWFの超進化系がクワレスなのかもしれないね」

 竹馬の友が、幼少の頃から全く変わらないクワガタ馬鹿の僕に向かって、茶化して言った。

 

「なるほどね。よ~し、クワガタ君たちにUの魂を伝授していくぞ~」

 テンションが上がっている僕もノリノリで返した。

 

 しかし、僕は虫だけにそれを任せておくつもりはない。以前、宣言したように病気を克服したのを証明する意味でも、リングに上がろうと考えている。その時は、もちろんUWFスタイルで闘うつもりだ。

 

(このコーナーは第4金曜日に更新します)


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