miyazaki29 コートネームはユラ。どのような場面でも揺らぐことのない選手になるように名付けられた。Wリーグ(バスケットボール女子日本リーグ)の名門JX-ENEOSサンフラワーズに所属する宮崎早織は、スピードと思い切りの良さが売りのガード(G)である。ドライブで敵陣に切り込み、相手を揺さぶる。試合の風向きをガラリと変えるスーパーサブとして期待されている。

 

 これまで宮崎はアンダーカテゴリーの日本代表に選出されてきた。昨年はヤング隼ジャパン(若手主体の日本代表)入りするなど、将来を嘱望されている選手の1人だ。4年後の東京五輪での隼ジャパン(日本代表の愛称)候補である。

 

 ピューッと風が吹くように加速するドライブが、宮崎の代名詞である。彼女を指導するJX-ENEOSの佐藤清美ヘッドコーチ(HC)は「スピードはWリーグの中でも上位だと思います。スピードだけだったら、富士通の町田(瑠唯)よりもあるかもしれない」と高く評価する。昨シーズンのWリーグのベスト5(PG)に選出された隼ジャパンの町田と引けを取らぬ速さ。当然、対戦相手にとっては脅威以外の何物でもない。

 

 途中出場の多い宮崎は自らの役割について、こう語る。

「自分はスピードが持ち味。みんなが疲れて足が止まっているときに走って、ドライブにいって、流れを引き戻せるようにしたい」

 その速さを生かした前への推進力で、コート上に“追い風”を吹かす。

 

 バスケ人生の“案内役”

 

 2015-16シーズンのJX-ENEOSはレギュラーシーズンを20勝4敗の1位で通過した。2戦先勝方式のプレーオフのクォーターファイナルはアイシンAWウィングス(同7位)と、セミファイナルはデンソーアイリス(同4位)と対戦。いずれもスイープ(全勝)で下した。Wリーグ8連覇へ、10日からのファイナル進出を早々に決めた。既に全日本総合選手権大会の3連覇を達成しており、3年連続2冠への視界は良好だ。

 

miyazaki17 高卒2年目で迎えた宮崎の15-16シーズンは全試合でベンチスタート。なぜならJX-ENEOSには隼ジャパンの司令塔を務めるPG吉田亜沙美がいるからだ。ルーキーシーズンは吉田のケガもあって、スターターとなる回数も多かった。だが現在の宮崎は、主に吉田の控えという位置付けだ。佐藤HCも「吉田があまり良くないときに宮崎を出して流れを変えたい」との狙いで彼女を起用している。

 

 レギュラーシーズンは24試合中23試合に出場した。宮崎のプレーイングタイムは341分。全試合で割れば、1試合平均14.2分起用されている計算になる。チーム内では7番目の数字だが、彼女自身は「(もっと)出たいという気持ちもある」と本音を漏らす。女子バスケ界屈指の名門チームに入り、そう易々とポジションを奪えるわけではない。宮崎も現状での実力不足を認める。

 

 常勝を義務付けられるJX-ENEOSほどの強豪であれば、出場機会が保証されないのは分かっていただろう。それでもJX-ENEOS入りを決めたのは、家族の後押しがあったからだ。特に実業団のバスケ選手だった5歳上の姉からの「JXに行ったら間違いなく伸びていくと思うよ」というアドバイスは大きかった。

 

 宮崎のバスケ人生は姉の存在を抜きには語れない。JX-ENEOS入団をはじめとした大きな分岐点では必ず関わってきている。小学3年の宮崎がバスケを始めたきっかけもそうだった。

 

(第2回につづく)

 

miyazaki33宮崎早織(みやざき・さおり)プロフィール>

1995年8月27日、埼玉県生まれ。小学3年でバスケットボールを始める。南古谷アクロス、与野東中を経て、愛媛県の聖カタリナ女子高に進学した。聖カタリナでは1年から試合に出場し、2年時には主力として全国高校総合体育大会(インターハイ)、全国高等学校選抜優勝大会(ウィンターカップ)での準優勝に貢献した。3年時にはインターハイとウィンターカップで3位に入った。高校卒業後はJX-ENEOSサンフラワーズに入団。1年目から出場機会に恵まれWリーグ、全日本総合選手権大会の2冠を経験した。身長166センチ。背番号は32。

 

(文・写真/杉浦泰介)

 


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