パラスポーツ現場1610 001 10月6日、広島大学、広島県、広島県障害者スポーツ協会、そしてNPO法人STANDは、パラスポーツを通して共生社会を目指すための4者協定を締結しました。きっかけは、今年1月に設立された「広島県障害者スポーツ協会」です。実は、広島の同協会は47都道府県の中で一番最後に日本障がい者スポーツ協会に加盟しました。同協会の設立に向けて2年前の2014年に設立検討委員会が始まり、私も参加しました。STANDと広島のご縁はこうして生まれたのです。

 

 ここ数年、広島のスポーツ界は大躍進を遂げています。昨年はサッカーJ1のサンフレッチェ広島が優勝し、バレーボールのJTサンダーズがVプレミアリーグ14/15を制覇。12月の全国高校駅伝では世羅高校が男女揃ってのアベック優勝を飾りました。
 そして今年9月にはプロ野球の広島カープが25年ぶりのリーグ優勝! 広島はまさにスポーツ大国です。こうした環境下だからこそ、パラスポーツも大いに盛り上がることができるし、それを通して社会の変革へも進んでいけると考えたのです。

 

 これまでSTANDでは、パラスポーツ体験会やボランティアアカデミーを全国いろいろな場所で開催してきました。また誰でも体験会が開けるようにマニュアルを作成して公開もしています。しかし、それでもなかなか一度開催した地域での継続的な展開や、あるいは地域の他の機関や団体と連携して広がっていくという動きにはつながっていきません。
 今回、自治体、大学、パラスポーツの公的機関とSTANDの連携が生まれました。地域一体、スポーツとパラスポーツの一体、そして学生という若者たちと市民県民の一体化が実現しました。また、この広島から生まれるムーブメントを、地域を飛び出して他の地域との連動の役割をSTANDが担えるのではないか、とも考えています。これまでの全国各地で展開していた点を打つような単発での活動が、周辺地域との連携や継続的な開催などへ発展し、点から立体的なものになるのではないかと期待が膨らんでいます。

 

パラスポーツの現場1610 002 さらには広島では地域の経済界の応援とともに、広島カープの協力もいただけることになっています。プロ野球選手たちと共に活動することで、明るいイメージで共生社会を感じとってもらえます。例えばカープの選手と一緒に障がいのある人もない人もスポーツをする場面では、障がいのある人やパラスポーツへ抵抗感や違和感のある人がいたとしても、それを払拭できるはずです。

 

 障がいのある人もない人も共に生きる共生社会へ向けて、このような活動をいろんな地域で、継続できる仕組みを形成したい。そう考えて、まずは広島から第一歩を踏み出します。

 

伊藤数子(いとう・かずこ)プロフィール>

新潟県出身。パラスポーツサイト「挑戦者たち」編集長。NPO法人STAND代表理事。スポーツ庁スポーツ審議会委員。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会顧問。STANDでは国や地域、年齢、性別、障害、職業の区別なく、誰もが皆明るく豊かに暮らす社会を実現するための「ユニバーサルコミュニケーション事業」を行なっている。その一環としてパラスポーツ事業を展開。2010年3月よりパラスポーツサイト「挑戦者たち」を開設。また、全国各地でパラスポーツ体験会を開催。2015年には「ボランティアアカデミー」を開講した。著書には『ようこそ! 障害者スポーツへ〜パラリンピックを目指すアスリートたち〜』(廣済堂出版)がある。

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