17日、日本サッカー協会はアルガルベカップ(ポルトガル、3月5日〜)に臨むなでしこジャパン23名、ラ・マンガ国際大会(スペイン、同1日〜)に参加するU−23日本女子代表18名を発表した。なでしこにはMF宮間あや(岡山湯郷)、FW大儀見優季(チェルシー)、MF澤穂希(INAC神戸)らを選出。U−23には現在高校3年生のMF入江未希(日ノ本学園)らを招集した。両大会はアジアカップ兼15年カナダW杯アジア予選(5月、韓国)前の貴重な実戦機会となる。
 次代を担う若手が台頭

「若い選手たちに、非常に手応えを感じた」
 佐々木則夫監督は嬉しそうに語った。今月に行ったなでしこチャレンジ合宿。45人の若手選手がなでしこ入りを目指してアピールした。その中で数人の選手が指揮官に「近いうちになでしこのメンバーで試してみたい」と思わせるプレーを披露した。

 DF三宅史織(JFAアカデミー福島)は、昨年に続いてなでしこに選出された。出場したナイジェリア戦(13年9月22日)は、2対0の勝利にフル出場で貢献した。昨季は特別指定選手としてINAC神戸レオネッサに所属し、なでしこリーグでもプレーしている。佐々木監督は「なでしこリーグを経験した中で、体を呈した守備対応のところが非常に成長した」と三宅を評価。また同じDFでU−23に選ばれた羽座妃粋(日ノ本学園)、乗松瑠華(JFAアカデミー福島)も合わせて、「駆け引きをしながらボールを運ぶところに長け、インテリジェンスがある」と高評価であること明かした。

 また前線の選手ではFW吉良知夏(浦和)、入江の名前を挙げた。吉良は各年代別代表に選ばれ、将来を嘱望されてきた。浦和レッズレディースでは2年目からレギュラーとして活躍。ここまでリーグ戦通算50試合24ゴールを挙げている。佐々木監督は「技術的な要素、実戦能力が高い。あと彼女は特に守備の切り替えが遅かったり、守備の意識が足りなかったが、非常によくなってきた」と選出理由を明かした。

 入江は今年1月の高校女子サッカー選手権で、得点女王(8得点)に輝く活躍で日ノ本学園高校を頂点に導いた。得点感覚、キープ力、運動量の全てにおいて高水準を保ち、積極的な仕掛けで攻撃のスイッチを入れることもできる。現在、なでしこはドリブルで相手の守備ブロックを崩すことにもトライしている。その上で指揮官は「仕掛けのところで、持ち味を持っている」と今後のなでしこ入りを期待した。

 なでしこ、5月に向けて確認を

 今後が期待される選手が多く選ばれたU−23に比べ、なでしこはこれまでチームを支えてきた選手が選ばれた。この理由について、佐々木監督は「欧州組の選手が数多くなり、その中で、欧州組の選手の現状と今後について視察する」と語った。欧州組はアジア杯には直前の合流が予想されている。ゆえに、アルガルベ杯で少しでもチームづくりを進めておきたい考えだ。大会ではドリブルでの仕掛けに加え、守備でも昨年から導入した「4分の1に囲い込みながら、相手の自由を奪いつつ、効果的に相手の組織的な展開を阻止する」戦い方を試す。

 アルガルベ杯に臨むなでしこは、オフシーズン中の国内組とシーズン中の欧州組とのコンディションで差がある。また全員が合流してから試合までの準備期間も短い。その中で、初戦に米国(FIFAランキング1位)とロンドン五輪以来に顔を合わせる。
「条件的にも厳しいと思う。しかし、どんな状況であっても、とにかく食らいついて、勝負にこだわらせる。(米国戦では)簡単に相手に勝利を与えてはダメだというくらいの気持ちで頑張らせたい。大会では様々なアクシデントがあったり、条件が悪い中で戦わなければならない状況も出てくる。状況が悪い中での戦い方を想定しながらやっていきたい」

 佐々木監督は米国戦へこう意気込み、今後のメンバー選考についても語った。
「ラ・マンガ国際大会、アルガルベ杯の選手たちのパフォーマンスを視察しながら、5月にベストのメンバーを決めていきたい。(なでしこの)ベテラン、経験値の高い選手がいるアルガルベ杯では(選手たちに)優勝に近いものを目指してもらいたい。若い選手はスペインで頑張ってくれれば、逆転する傾向もあり得る」

 両大会でのアピールは5月のアジア杯はもちろん、15年W杯、そして16年リオデジャネイロ五輪にもつながっていく。なでしこの座をかけたサバイバルレースが、いよいよ本格化する。

<なでしこジャパンメンバー23名>

GK
福元美穂(岡山湯郷Belle)
海堀あゆみ(INAC神戸レオネッサ)
山根恵理奈(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)
DF
近賀ゆかり(INAC神戸→アーセナルレディースFC)
岩清水梓(日テレ・ベレーザ)
鮫島彩(ベガルタ仙台レディース→ヒューストン・ダッシュ)
有吉佐織(日テレ・ベレーザ)
北原佳奈(アルビレックス新潟レディース)
坂井優紀(ベガルタ仙台レディース)
熊谷紗希(オリンピック・リヨン)
三宅史織(JFAアカデミー福島→INAC神戸レオネッサ)
MF
澤穂希(INAC神戸レオネッサ)
安藤梢(1.FFCフランクフルト)
宮間あや(岡山湯郷Belle)
川澄奈穂美(INAC神戸レオネッサ→シアトル・レインFC)
阪口夢穂(日テレ・ベレーザ)
田中明日菜(1.FFCフランクフルト)
宇津木瑠美(モンペリエHSC)
木龍七瀬(日テレ・ベレーザ)
中島依美(INAC神戸レオネッサ)
FW
大野忍(ASエルフェン狭山→アーセナルレディースFC)
大儀見優季(チェルシーレディースFC)
高瀬愛実(INAC神戸レオネッサ)
岩渕真奈(TSG1899ホッフェンハイム)

<U−23日本女子代表18名>

GK
武仲麗依(INAC神戸レオネッサ9
井上ねね(JFAアカデミー福島→日本体育大)
DF
高村ちさと(アルビレックス新潟レディース)
三橋眞奈(大阪体育大)
上野紗希(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)
石井咲希(浦和レッズレディース)
乗松瑠華(JFAアカデミー福島→浦和レッズレディース)
羽座妃粋(日ノ本学園高→日本体育大)
MF
杉田亜未(吉備国際大→伊賀フットボールクラブくノ一)
柴田華絵(浦和レッズレディース)
田中陽子(INAC神戸レオネッサ)
吉見夏稀(ノジマステラ神奈川相模原)
猶本光(浦和レッズレディース)
入江未希(日ノ本学園高→ベガルタ仙台レディース)
FW
吉良知夏(浦和レッズレディース)
佐藤楓(スペランツァFC大阪高槻)
京川舞(INAC神戸レオネッサ)
田中美南(日テレ・ベレーザ)

(写真・文/鈴木友多)