22日、3月1日のJリーグ開幕を前に都内ホテルで「2014Jリーグキックオフカンファレンス」が行なわれ、J1・J2・J3全51クラブの監督と代表選手が集結した。カンファレンスのなかでは、開幕に先駆けて開催される「富士ゼロックス・スーパーカップ」(2月22日、国立)の前日会見も開かれ、対戦する前年度J1リーグ覇者のサンフレッチェ広島と天皇杯王者の横浜F・マリノスの監督と代表選手が意気込みを語った。
(写真:J1全18クラブの選手たち。中央檀上は村井チェアマン)
「今年は“Do All Sports”というキーワードで、百年構想を広めて参りたい」
 村井満Jリーグチェアマンは、スピーチの冒頭でこう語った。“Do All Sports”にはスポーツをプレーする、プレーを観戦する、イベントに参加するという意味が込められている。

 日本の隅々までスポーツ文化を広めるというJの理念の下に、今季からJ3がスタートする。これにより、Jクラブ数は51に、Jクラブのある都道府県は36に増えた。
「全てのチームが勝利を目指して戦うが、勝敗を超えて地域の皆さんに愛していただけるようなクラブ作りを目指して全力で頑張っていく」
 そのために、村井チェアマンは、カンファレンスに出席した監督、選手と「3つの約束」をしたという。ひとつは、「笛が鳴るまで全力でプレーする」。これはシミュレーションを含め、少しの接触で過度に痛がる素振りを見せたり、レフェリーに抗議して試合の進行を妨げないということだ。

 二つ目は「リスタートを早くする」こと。リードしているチームがゴールキック、コーナーキックなどで時間をかけてリスタートする場面をなくす。3つ目に「見苦しいような、時間稼ぎのような交替」の自粛だ。
(写真:「私含め、51クラブ全員で総力を結集して頑張っていきたい」と語った村井チェアマン)

 これら3つの約束をした背景を、村井チェアマンはあるデータを引用して説明した。
「Jリーグが2006年に調査をした中で、『Jリーグに関心があるか』という質問がある。「ある」と答えた方が06年度は46%。それが12年度は30.4%に減少している。これを危機ととるか、可能性ととるか。30%の人はJリーグに関心がある。そういうコアなサポーターの方々は、まさに勝利のための駆け引きそのものを楽しんでいると思う。一方で、7割の人は、選手は痛くもないのに痛がったり、時間稼ぎをしている風景を見ると、そこに対して反発心を抱くかもしれない。
 いまJリーグは、J1でいえば1試合の平均入場者数が1万7266人。なだらかな減少を辿っている。先ほど7割の方、スタジアムにまだ足を運んでいない方が、新たにスタジアムに来ていただければ、我々はまだまだ可能性がある。そういう意味では、全力をもってプレーをする、フットボールそのものの中で実力を磨いて行く。そして、新しいお客様を獲得して行く。そういうことにより第一歩を踏み出したいと思っている」

 そして、「今年、どうしても頑張ってほしいのはAFCチャンピオンズリーグ」と語り、出場するサンフレッチェ広島、横浜F・マリノス、川崎フロンターレ、セレッソ大阪の4チームに、“優勝指令”を出した。
「いずれかのクラブがアジアのチャンピオンを是非にでも取ってほしい。そして、FIFAクラブW杯で世界の強豪と互して戦い、Jリーグが、真にアジアのチャンピオンであることを、なんとしても世界に示してほしい」

 これを受けて、C大阪のFW柿谷曜一朗は「日本のチームが4強に全部残るくらいの気持ちで頑張って、最後は僕らが優勝する」と意気込んだ。そのC大阪には10年南アフリカW杯MVP&得点王のFWディエゴ・フォルラン(ウルグアイ代表)が加入した。Jにとっては久々のビッグネーム。彼を楽しみにしてスタジアムに足を運ぶファン・サポーターも増えるだろう。しかし、チームメイトの柿谷とっては、少し違うようだ。
「ポジションが近いので、いいライバルだと思ってやっている。チームメイトなので、僕らがサポーターやメディアと同じ目線で接していたらうまくいかない。同じ立場、同じ一選手として考えている」
 仲間でもあり、ライバルでもある。世界屈指のストライカーと日本屈指のストライカーがしのぎを削るC大阪から目が離せない。
(写真:柿谷はブラジルW杯メンバー入りも狙う)

 そんな大物選手の加入も含めて、村井チェアマンは今季のJを「話題満載、魅力満載」と表現した。どれだけのファン・サポーターにそう感じてもらえるか。21年目のJがいよいよ始まる。

 今季初タイトルをかけて激突 〜富士ゼロックススーパー杯〜

 続いて、翌日に迫ったゼロックス・スーパー杯の前日会見では、広島から森保一監督と青山敏弘、横浜FMから樋口靖洋監督と藤本淳吾が出席した。広島は昨季、史上4クラブ目のJ1連覇を成し遂げ、対する横浜FMも21年ぶりの天皇杯王者となった。いずれも天皇杯決勝まで試合があったため、短いオフの後にあった準備期間は4週間あまり。その中で昨季のチーム力にどれだけの積み重ねができているかがポイントとなる。
(写真:新加入の藤本<左>と就任3年目となった樋口監督)

 横浜FMは昨季、レギュラーに35歳オーバーの選手が4人おり、“オッサン軍団”としてリーグに旋風を巻き起こした。今季もMF中村俊輔、DF中澤佑二らベテランがチームの中心だ。そこに、元日本代表の藤本ら即戦力を補強。土壇場で逃したリーグタイトルを今季こそは自力で勝ち取りたいところだ。
「今年で3年目を迎えるが、1年目でベースをつくり、2年目で積み上げてきて、3年目は発展させる。そのために選手補強もしたので、新しいF・マリノスの形を見せられると思う」
 樋口監督はこう自信を述べた。

 対する広島は、昨季は王者として相手に研究される中、攻撃力こそ落ちたものの、失点数はリーグ最少。粘り強く上位をキープし、最終節で逆転優勝を果たした。昨季までの守護神・GK西川周作が移籍したが、代わりにベガルタ仙台でゴールを守っていた元日本代表GK林卓人を獲得。フィールドプレーヤーでもMF柴崎晃誠、MF柏好文ら他チームで主力を張っていた選手を補強した。森保監督が「これまで積み上げてきたサンフレッチェのスタイルを出したい」と語るように、継続路線でシーズン開幕を迎える。
(写真:青山<右>は佐藤寿人からキャプテンを引き継いだ)

 実際にピッチで戦う選手も力強く抱負を語った。新加入の藤本は、ここ2シーズンで広島が横浜FMに勝利していないことを引き合いに出し、「明日も勝って苦手意識を広島に植え付けたい」と勝利宣言。一方で、今季から新キャプテンに就任した青山も負けじと応戦した。明日が誕生日である青山は「(試合日が誕生日なのは)運命だと思っている(笑)。キャプテンとして、明日このカップを掲げたい」とバースデー勝利を誓った。

 スーパー杯を制し、リーグ戦、ACLに弾みをつけるのはどちらか。2014年のJリーグを占う一戦は、国立競技場で13:35にキックオフされる。

(写真・文/鈴木友多)