第185回 関わる人の変化を実感できるウェブサイト「挑戦者たち」

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 ミラノ・コルティナオリンピックが閉幕しました。いよいよ来月はパラリンピックです。

 思い返せば、2010年3月、バンクーバーパラリンピックに合わせて、パラスポーツの総合サイト「挑戦者たち」が始まりました。

 

(写真:第1回ゲスト、2010バンクーバーパラリンピック・クロスカントリー日本代表の新田佳浩選手<中央>、同クロスカントリー・バイアスロン日本代表監督の荒井秀樹さん<右から2番目>。右端は当時2人が所属していた日立システムアンドサービスのスキー部・勝呂陽一さん)

 パラスポーツに関するインタビューコンテンツ(これは二宮清純氏にご協力をいただいています)、写真、動画、トピックス……。今年で17年目になります。

 

 当初は、想像通りではありますが、

「この写真は外すように」

「掲載されている文章は間違っている。取り下げるように」

「うちの子が出ている。けしからん」

 という声が届きました。

 

 もちろん、お叱りばかりではありません。

 水泳の動画を掲載した時のことです。事務所に一本の電話がありました。出場した女子選手のお母様からです。受話器を取ると、まず興奮が伝わってきます。「これはまた叱られるな」なんとネガティブな思い込みでしょう。

 

「動画を観ました。本当にありがとうございました!」。実は、感謝のお言葉だったのです。

「パソコンの画面で見たら、娘はまるでオリンピックの選手のようでした」

 当時、パラスポーツの報道はほとんどありませんでした。自分で撮ったものと、きちんと番組に仕立てたものとでは、違ったことでしょう。

「こうして見せてもらったら、一流のスポーツ大会にでている選手みたいでした。娘はほんとに頑張っているんだと改めて思ったんです」

 その弾んだ声に、私も嬉しさがこみ上げてきました。

 

 こんなこともありました。

 クロスカントリースキー大会の写真を掲載しました。サイトをご覧になった女性からです。女性には車いすを使用する小学生の息子さんがいました。

「この写真をください!」

 シッティングクラスの選手の写真でした。

 聞くと、クラス替えがあってから、だんだん学校に行かなくなって約1年。ほとんど家にいるそうです。

 

 写真は-19℃の大会会場。雪が激しく降り、必死の形相、口からはつらら……。

「この写真を見せたら、あの子は絶対に反応する。スキーをさせたいんじゃなくて、スポーツでもなくていいんです。でもこの写真を見せたら、どこかに出かけようってきっと思うはず。私にはわかるんです」

 

 ウェブを開設して間もないころ、子どもたちの大会写真を掲載する機会がありました。現場でカメラを向けると、ほとんどの子たちが、「ピース!」と笑顔を向けてくれます。「撮らないでください」と言うのは、保護者や先生でした。当時は障害のある子どもの写真などがウェブに掲載されることに、大きな抵抗があったのです(子ども当事者にはまったくありませんでしたが……)。

 

 それでも、出場する子どもたちの力強さや笑顔を掲載し続けると、時とともに保護者の見方も変わっていくのが手に取るようにわかりました。見てもらうこと、知ってもらうことは、これまでとは違う世界をつくる可能性があるのだと教えられました。

 

 これからも、変わる、続けるのを楽しみに。さあ、私たちも、続けていきましょう。

 

 

 

伊藤数子(いとう・かずこ)プロフィール>

新潟県出身。パラスポーツサイト「挑戦者たち」編集長。NPO法人STAND代表理事。STANDでは国や地域、年齢、性別、障がい、職業の区別なく、誰もが皆明るく豊かに暮らす社会を実現するための「ユニバーサルコミュニケーション事業」を行なっている。その一環としてパラスポーツ事業を展開。2010年3月よりパラスポーツサイト「挑戦者たち」を開設。また、全国各地でパラスポーツ体験会を開催。2015年には「ボランティアアカデミー」を開講した。2024年、リーフラス株式会社社外取締役に就任。著書には『ようこそ! 障害者スポーツへ~パラリンピックを目指すアスリートたち~』(廣済堂出版)がある。

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