スコットランドは日本にどんな空気感で対峙するか

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 3点差の勝利が必要な状況で、チームは先制点を奪われた。相手は優勝候補、気持ちが切れてしまっていても不思議ではない。

 

 だが、彼らは諦めなかった。まず1点を返して前半を終えると、後半の立ち上がりにPKを獲得して逆転に成功する。あと2点。そんな状況で生まれたのが、身長1メートル65、“リトル”の愛称で親しまれるアーチ-・ゲミルのスーパーゴールだった。

 

 左足、左足、左足、そしてまた、左足。飛び込んでくるDFたちをことごとくワンタッチでかわし、最後はチップキックでふわりとGKを破った。英国BBCのアナウンサーが「ブリリアント!」と絶叫した、W杯史上に残る美しいゴールだった。

 

 スコットランドといえば、まずわたしはこのゴールと、ゲミルの小さなガッツポーズを思い出す。

 

 直後にオランダに1点を返されたことで、スコットランドの78年W杯は終わった。4年前、ブラジル、ユーゴスラビアと引き分けながら、グループ最弱のザイールに2点しか取れなかったことで得失点差に泣いた彼らは、アルゼンチンでもイランと引き分けたことが致命傷になった。4年後のスペインでも、命取りになったのはニュージーランドに喫した2失点だった。

 

 スコットランドは、そんなチームである。つまり、強気に強く、弱きに弱い。その歴史によるものなのか、それとも民族性なのか、強者とは凄まじい闘志で渡り合いながら、弱者にはいとも簡単にゴールを許す。ゆえに、過去のW杯で彼らただの一度も決勝トーナメント進出を果たすことができないでいる。

 

 28日(日本時間29日)、日本代表はスコットランドと、彼らの伝説的な本拠地、かつては“ハンプデン”と表記されてきたハムデンパークで激突する。もしかすると、多くの方は翌週に控えるイングランド戦に気持ちが行っているかもしれないが、個人的にはめちゃくちゃ興味深いスコットランド戦である。

 

 26年現在の日本が、スコットランドの選手から、ファンから、どのように見られているかが明らかになりそうで。日本の立ち位置を教えてくれそうで。

 

 正直なところ、この試合の勝敗はわたしにとって最大の関心事、というわけではない。それよりも、どれぐらい試合が、スタジアムが熱を帯びるか。強者には強く、弱者には弱いというイメージのあるスコットランドが、どんな空気感で対峙してくるのか。

 

 まず、それを感じたい。

 

 ちなみに、25日時点でのブックメーカー「ウィリアム・ヒル」は、スコットランドの勝利に9/4(3.25倍)、引き分けに21/10(3.10倍)、日本の勝利に23/20(2.15倍)というオッズをつけている。アジアでは圧倒的な強さを見せ、世界的な評価を高めている日本といえども、グラスゴーでスコットランドを圧倒できるほどではない、という見立てだろう。

 

 スコットランドの選手やファンが、同じような見方を日本に対してしているのであれば、試合が熱を帯びる可能性は低い。個人的には、セルティックを知るグラスゴーのファンは、ロンドン(ブックメーカー)の見立てとは違い、日本を相当な強敵として認識していると踏むのだが、果たして。

 

 言うまでもなく、この試合の内容、結果はスコットランドにとっての長年の宿敵、イングランドでも注視されている。ライバルは日本を強敵とみなしたのか、否か。ウェンブリーの試合がどうなるかもかかった、極めて重要な一戦である。

 

<この原稿は26年3月26日付「スポ-ツニッポン」に掲載されています>

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