羽生結弦にとっての”クリスタルのあの子”とは ~「PREQUEL:Before the WHITE」→「ICE STORY 4thWHITE…」~

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 プロフィギュアスケーターの羽生結弦が総指揮を執り、出演した単独公演「Yuzuru Hanyu “REALIVE” an ICE STORY project」が11日、12日と2日間にかけて宮城県利府町のセキスイハイムスーパーアリーナで行なわれた(初日公演観客数:7000人)。初日公演は2部制だった。羽生は第2部で「PREQUEL(プリクエル):Before the WHITE」(アニメーション含む全10曲)を演じた。公演の終盤には「ICE STORY 4th WHITE…」の開催が予告された(時期は未発表)。

 

 2部「PREQUEL(プリクエル):Before the WHITE」の概要は<真っ白な美術館は、心のアルバムを象徴?>で触れた。記事はこちらから。

 

 羽生は初日公演の終盤、「PREQUEL(プリクエル):Before the WHITE」についてマイクを使い氷上でこう語った。

「なかなか初見だと難しいストーリーだろうなぁ(笑)。と、思いつつ、自分としては噛めば噛むほど味が出る的な、僕としては初めて言葉では全然語らないICE STORYというテーマで今回、プリクエルを創らせていただきました」

 

 そして、氷上でこう続けた。

「考察とかいろいろ……(観ている人が)どんな感情になったかとか僕も知りたいんです。皆さんが思うがままの物語の受け取り方がすべてだ、と思いながらプリクエルを創らせていただいた」

 

 プリクエルに出てきたクリスタル(水晶)のかたちをしたキャラクター。“あの子”がアニメーションに登場した主人公及び、氷上を滑る羽生に彩を与えていた。アニメーションに出てきたキャラクターの名称がはっきりしていないため、ここでは”あの子”と呼ばせていただく(のちにkakuと判明)。

 

 アニメーションの“あの子”について、羽生はこう語った。

「それぞれの大切な人であったり、大切なものであったり、大切な出会い、みたいな感覚で“あの子”を見ていただけたらうれしいなぁ、と思います」

 

 羽生にとって大切な存在の1つは、フィギュアスケートではないか――。

 

 フィギュアスケートだけに限るつもりはないが、羽生はこの競技によってたくさんの楽しみや喜びを感じる機会に接しただろう。それと同時に、フィギュアスケートによって苦しみやつらさ、さらには悲しみとも向き合わなければならなかったのではないか。

 

 悲しいことに、アニメーション内で一緒に楽しく過ごしていた”あの子”は「PREQUEL(プリクエル)」の終盤、粉々に砕けてしまう。

 

 羽生にとってそのタイミングとは、東日本大震災で被災し、避難所生活を余儀なくされたことでフィギュアスケートがしばらくできなくなったときか。故郷である宮城を出て練習拠点を転々としながら「自分はスケートをやっている場合なのか」と自らを責めたときだろうか。2022年北京冬季五輪ショートプログラム時、氷にできた穴にスケート靴の刃がはまってしまったときか。

 

 ちなみに、クリスタル(水晶)の語源は、ギリシャ語で氷を意味する「KRUSTALLOS(クリスタロス)」だという。第2部「PREQUEL(プリクエル)」で、羽生が氷の欠片手ですくい宙に投げるシーンがあった。付言すれば、クリスタル(水晶)は4月の誕生石としても知られている。

 

 そして、第2部「PREQUEL(プリクエル)」終盤にナレーションが入る。

「ゆっくりと世界に目を凝らす。そこには美術館があった……」

 

 すると、スクリーンには真っ白な美術館が映った。館内も真っ白のようだった。さらに間を置き、画面には<To be continued ICE STORY 4th WHITE…>の文字が映しだされた。

 

 真っ白な美術館を彩る要素は何だろう。ICE STORYという新たなジャンルを開拓した悦び、新たな仲間と創作に没頭する時間、スケーターと表現者の両立、はたまた応援してくれる人々の喜ぶ姿だろうか。

 

「ICE STORY 4th WHITE…」に出てくる美術館は最終的にどんな姿になるのか。観る者の心に投影される美術館はどんな姿になるのだろうか。

 

 “あの子”の正体を知りたいわたしがいる。しかし、その正体は人それぞれなのがまた、難しい。

 

(文/大木雄貴)

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