39歳メッシに見た「頭の技術」の凄味

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 リオネル・メッシは、39歳になってもリオネル・メッシである。

 

 FIFAワールドカップ準決勝、もう一つのカードはアルゼンチン代表とイングランド代表という因縁の対戦。ディエゴ・マラドーナの5人抜き、神の手、デビッド・ベッカムの退場劇など、過去には様々なドラマがあった。24年ぶりの対戦も、何かが起こりそうな雰囲気が漂っていた。

 

 主役はやはりメッシだった。

 

 後半10分にアンソニー・ゴードンのゴールで先制され、イングランドに守備を固められながらも終盤にドラマが待っていた。猛攻が続いていた同40分、右のショートコーナーからリターンを受けたメッシがドリブルで中に向かって相手を引き寄せておいてから、中央でフリーとなったエンソ・フェルナンデスにパスを送って同点のミドル弾を呼び込む。

 

 そして迎えたアディショナルタイム。アレクシス・マクアリスターのシュートが右ポストを叩くと、スプリントを使ってマイボールにしたのが背番号10。ダブルチームを組んで対応する相手に、また中に切り込むと見せかけておいて縦へ。利き足ではない右足から放たれた美しいクロスを、5人目の交代で最後に入ってきたラウタロ・マルティネスがヘディングで合わせて逆転に成功した。60年ぶりの決勝進出を目指すイングランドを下し、2連覇に王手を掛けた。

 

 中がダメなら外へ。

 

 メッシはイングランドに先制されてから右サイドにポジションを取るようになり、中を締めてラインを下げてくるスリーライオンズを揺さぶり続けたことが結局は突破口となった。

 

 特に2点目のアシストは、スプリントを使っての守備、縦突破からの右足のクロスという意外性に富んだものであった。これを最終盤にひねり出してチームのゴールに結びつけてしまうのだから、いやはや驚き入るばかりだ。

 

 ここまで全7試合に出場(先発は6試合)。ノックアウトステージに入ってからは先発フル出場を続け、延長戦にもつれ込んだラウンド32のカーボベルデ代表戦、準々決勝のスイス代表戦は120分間プレーしている。そのスイス戦から中3日、39歳のベテランはまたも違いを見せつけたわけである。8ゴールは今大会の得点ランキングトップ。衰えるどころか、凄味を増している感すらある。

 

 筆者はメッシの活躍を眺めながら、日本サッカー界きっての理論派として知られる風間八宏氏(現在は関東サッカーリーグ1部南葛SC監督)の言葉をふと思い出していた。「伝わる技術」(風間八宏著、講談社現代新書)の構成を担当した際、サッカーにおける技術についての解説がとても興味深く、まさにメッシと重なった。風間氏は技術には3つの要素があり、それは頭を使う技術、ボールを扱う技術、体を使う技術だと説いた。

 

 本書の一部を抜粋したい。

「この心技体ならぬ『頭技体』の3つを備えておけば、これらを駆使して相手に勝つこと、相手を怖がらせることができるのです。(中略)

 サッカーはボールがないと始まりません。ボールをどう扱うかが結局はすべてなのです。体が小さくても、弱くても、体の単純なスピードがなくても、ボールという武器を扱って相手を圧倒する方法論はたくさんあります。

 たとえば自分より相手のほうが足が速いなら、相手を歩かせてしまえばいい。自分の体が弱ければ、相手に体を触らせなければいい。スピードを上げたり、体幹を強くできるならそれに越したことはないですが、『頭』で発想するなら、これで相手を上回れるのです。

 3つの技術のうちたとえ一つが負けたとしても、それ以外の2つで勝てる選手になればいい。最も大事なことはそれをしっかり理解して相手と戦えること。これが知恵のある選手です」

 

 メッシは頭と体の技術が飛び抜けているから、小さな体をうまく使うことで不利にしていない。プレー中に歩いていることがクローズアップされるが、サボっているのではなく「相手を歩かせる」意味も抜け落ちてはいけない。

 

 そして風間氏は「限界のない『頭』を伸ばすことで技術、体も伸びていく」とも記す。頭の技術力アップが、結果的にテクニック、フィジカルを引き上げている。フィジカルで言えば数値的には年齢を重ねるとともに下がることは止むを得ないものの、ボールを介することで、頭で発想することで補えるというわけである。限界のない頭の技術を今なお伸ばしているからアラフォーにして一つひとつのプレーが色褪せないのだ。

 

 ワールドカップを2連覇したのは過去にイタリアとブラジルの2カ国しかない。アルゼンチンがその名を刻めるかどうかは、やはりメッシに懸かっている。

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