第1217回 ブカツ「地域展開」で問われるスポーツの価値とは?

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 進行する少子化や教職員の働き方改革に端を発する公立中学の部活動の「地域展開」は、「改革推進期間」として2023年度にスタートし、今年度からは「改革実行期間」に移行した。

 

 いわゆるブカツは学習指導要領の総則で、「学校教育の一環」と規定されている一方で、「生徒の自主的、自発的な参加により行なわれる」との条文が示すように、強制的な勧誘は認められない。やる、やらない、やめるは、あくまでも本人の意思に委ねられる。

 

 先頃、都内で「部活動の地域展開 現在地と未来」と題したシンポジウムが開催され、旗振り役の遠藤利明JSPO会長(元五輪パラリンピック担当大臣)らとともに議論に臨んだ。

 

 改革を進める上での最大の課題は財源である。今年度の国の直轄予算は約139億円。地方負担を含めると約400億円規模になる。これらは主に指導者への謝金や事務局員の人件費、活動場所の環境整備、経済的困窮世帯への支援などに使われる。だが、それでもまだ足りない、という意見が相次いだ。当然だ。これまでブカツは教職員からの“労働搾取“によって成り立っていたのだから。

 

 

 学校現場で残業を行なった場合、公立中学校の教職員には、「給特法」(教員給与特例法)が運用される。これが悪名高き“定額働かせ放題法”だ。どんなに残業をしても、支給される額は本給の4%のみ(教職調整額)。今年1月から5%に引き上げられたが、定額制の仕組み自体は温存された。昔に比べると減少したとはいえ、「過労死ライン」を突破した公立中学の教職員は36%を超える(文科省調査・22年度)。

 

 そこで受益者負担制の導入が避けられない論点として浮上してきた。だが「そう簡単にはいかない」という声が、現場からは数多く寄せられた。「今まで部活はタダも同然だったのに、なぜカネがかかるのか」。スポーツ庁が提示した月謝は「1000円から3000円程度」。それでも高いという指摘が少なくないというのだ。物価高による家計の圧迫がその背景にはあるようだ。

 

 もっとも行政も手をこまねいているわけではない。多くの自治体が低所得世帯に対する支援制度の拡充に乗り出している。ゼロにはできないにしても、機会格差や体験格差は限りなく小さい方がいい。

 

 少し角度を変えて、この問題を俯瞰してみたい。公立中学校に通う3年生の塾費用は、ひとり平均約39万円から46万円に及ぶ。優秀な家庭教師をつければ、この程度ではすまない。

 

 皆が皆、そうだとはいわない。しかし、こうしたデータからは学習塾にはカネを惜しまないが、ブカツはなるべく安上がりに、という時代の風潮と世の空気感が見てとれる。スポーツの価値とはその程度のものなのか。そしてコーチングの正当な対価とは……。チコちゃんじゃないけど、全国民に聞いてみたい。

 

<この原稿は26年8月19日付『スポーツニッポン』に掲載されたものです>

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