中東の代弁者となったAFC 東西分離すべき?

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 もしわたしがクレイグ・フォスター氏であったならば、憤慨しつつもドヤ顔で言い放っていたことだろう。

 

「だから言わんこっちゃない!」

 

 元オーストラリア代表で、98年W杯フランス大会プレーオフ、イランとの伝説的なドラマの一員でもあった氏は、今年の4月10日、英「ガーディアン」紙でアジア杯の代替開催を自国の政府と協会に働きかけていることが報じられた。

 

 なぜか。4月11日にリヤドで予定されていた組み合わせ抽選会は、中東地域での紛争を理由に延期が発表された。氏はこの決定を受け、オーストラリアであれば短期間で対応できる、選手や観客にとって安全とは言えない地域で大会を開催すべきではないと訴えたのである。

 もちろん、彼の主張はアジアサッカー連盟(AFC)に何の影響も及ぼさなかった。延期された抽選会は5月9日に行われ、大会は予定通りの日時に予定通りの場所で開催されることが確認された。

 

 だが、11月3日、AFCは大会の延期を発表し、以下のような理由を付け加えた。

 

「物流・運営上の大きな困難や渡航の混乱を含む、地域情勢の変化によって生じた現在の例外的な状況を踏まえた」

 

 彼らがあげた理由の中に、過激派による攻撃や戦争、テロといった単語は入っていない。ちなみに、抽選会が延期された際の理由はこうだった。

 

「抽選会にすべての関係者が支障なく出席できるよう、慎重に検討した上で決定した」

 

 誰がどうみても、抽選会が延期されたのも、大会自体が1年先送りになったのも、原因はテロや紛争による治安の悪化である。にもかかわらず、AFCは頑なにそうした表現の使用を避けている。申し訳ないが、これではまるで、“ダチョウの平和”である。土の中に頭をつっこみ、天敵が見えなくなったことで安全になったと思い込む愚行でしかない。

 

 もちろん、自分たちがあげた理由の“苦しさ”は、文言をつくったスタッフが一番よく理解していることだろう。そうせざるを得なかった事情も分かる。テロや紛争を理由にしてしまえば、それが「例外的な状況」とはいえなくなってしまう。延期した先の安全が保障されるわけでもない。となれば、アジア杯はもちろん、34年に予定されているW杯開催にまで累が及びかねない。

 

 アジア杯、そしてW杯の開催予定国であるサウジアラビアが、自国の安全を強調するのは、ある意味で当然のことである。彼らはすでに、ばく大な額を準備に費やしてもいる。問題は、彼らを管轄すべきAFCが、完全にサウジの言い分に同調していることである。

 

 各国協会が自国の利益のために動くのは当然のこと。だが、AFCが動くべきは、アジア全体の利益のためではなかったか。

 

 先週も書いたが、アフリカネーションズ杯では「エボラ熱の感染者が入国する可能性があるので大会を延期したい」というモロッコの要望が退けられたことがある。アフリカサッカー連盟(CAF)は、モロッコに対して100万ドル(約1億2000万円)の罰金を命じたばかりか、損害賠償として805万ユーロ(約10億円)を請求した。いずれもCAS(スポーツ仲裁裁判所)によって減額が命じられたものの、大陸連盟と各国協会との関係性がうかがえるエピソードではある。

 

 自国の事情で延期を申し出たという点において、モロッコとサウジの立場にさしたる違いはない。だが、大陸協会の対応は、正反対と言えるほどに違う。

 

 もちろん、これは優劣の問題ではない。ただ、現在のAFCが、選手ではなくサウジを第一に考える組織だということははっきりした。アジア杯が、一国の事情で日程を動かせる程度の大会だという認識も広がった。

 

 以前から言われてきたアジアを西と東に分けるべきだという考え方に対し、わたしは懐疑的だった。現実的ではない、とも思っていた。ただ、W杯最終予選のあり方も含め、AFCが露骨に中東の代弁者となってしまった以上、分離を考えているという姿勢だけでも示すべきではないか、そう考えるようになってきている。

 

<この原稿は26年11月5日付「スポ-ツニッポン」に掲載されています>

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