(写真:第1Qから好パスを連発した藤岡)

 20日、バスケットボール女子日本リーグ(Wリーグ)が千葉・成田市中台体育館で行われ、JX-ENEOSサンフラワーズが山梨クイーンビーズに96-47で勝利した。JX-ENEOSは第1クォーター(Q)から25-16とリードを広げると、第2Qは30得点奪い突き放す。主力を温存しつつ、ベンチ入りメンバー全員が出場し、得点を挙げた。96-47と50点近い差をつけての圧勝。リーグ史上初のV11に向けて、大勝発進だ。

 

 2年目・梅沢、両軍最多の19得点(成田市中台体育館)

JX-ENEOSサンフラワーズ 96-47 山梨クイーンビーズ

【第1Q】25-16【第2Q】30-11【第3Q】28-6【第4Q】13-14

 

(写真:ベンチとの一体感もJX-ENEOSの特徴)

 目立ったのは女王の強さばかりだった。それでもJX-ENEOSの選手たちに満足する様子は見られない。勝ち続けるチームの矜持を垣間見た気がした。

 
 記念すべき20回目のWリーグが開幕した。19日には一足先に富士通レッドウェーブと東京羽田ヴィッキーズが対戦。富士通が白星スタートを切った。この日は富士通と羽田以外のチームがシーズンの開幕を迎えた。
 
 リーグ10連覇中のJX-ENEOSは、成田市中台体育館で昨シーズンの開幕戦と同じ山梨と対戦した。スターティングラインアップを見ると、PG吉田亜沙美とC大崎佑圭に代わって藤岡麻菜美と梅沢カディシャ樹奈が起用された。
 

(写真:チーム最多のプレータイムを記録した宮崎。試合後は反省を口にした)

 吉田はバックアップメンバーとしてチームを支えるという。藤岡、宮崎早織といった若手に1番(PG)の役割を任せる時間も増えてくるだろう。日本代表、チームの絶対的司令塔として君臨してきた吉田がベンチに控えることで「安心してプレーできる」(藤岡)「心強い」(宮崎)との側面もある。
 
 一方の大崎は第一子を妊娠したこともあり、今シーズンの選手登録は見送っている。上記のチーム状況から3年目の藤岡、2年目の梅沢に寄せられる期待は小さくない。
 
「ガードとセンターが代わった。でもやることは変わらない」と佐藤清美HC。激しい守りからのアップテンポなバスケットボールを標榜する。司令塔役を任された藤岡も「ガードからプッシュして、ゲームをつくろうと意識しました」と語った。
 
 初得点は188cmの梅沢。藤岡が起点となり、インサイドできっちり仕事をした。相手のファウルももらいバスケットカウント。フリースローも入れて3点プレーでゴールラッシュの幕を開けた。
 
「大崎さんがいない分、“自分が頑張ろう”と。パスがきたら“絶対決める”という気持ちでプレーしました」
 第1Qはインサイドの梅沢にパスが集まった。180cm超のビッグマンがいない山梨とのミスマッチをついたかたちだ。その後も梅沢は着実にスコアを重ねた。武器である力強さを発揮。シュートチャンスはほぼ失敗しなかった。
 
 JX-ENEOSは25-16で第2Qを迎える。時計の針が進むにつれてリードを広げていった。終盤には、高卒ルーキーのF藤本愛瑚を投入し、ベンチ入りメンバー全員がコートに立った。Wリーグデビューを果たした藤本は、1分後にスリーポイントを決めて初得点も記録した。
 

(写真:今季出場機会は限られるという吉田。わずかなプレータイムでも抜群の存在感)

 主力を温存しながらもリードを第1Q終了時の9点差から28点差に広げて前半を終えた。その後も着実にスコアし、点差は開いていく一方だった。第4Qこそ得点が伸びず、100点ゲームには届かなかったが、49点差で圧勝した。
 
 CF渡嘉敷来夢、F宮澤夕貴といったスコアラーたちもこの日ばかりは脇を固めるかたちとなった。藤岡は10アシスト3スティール、梅沢は両軍最多の19得点8リバウンドをマークし、それぞれの持ち味を発揮した。
 
 梅沢は「もう少し緊張するかなと思ったけど落ち着いてできた」と振り返る。「あれぐらいやってもらわないと困る。今日の相手はサイズが小さかった。まずまずの出来」と佐藤HCの梅沢評。それだけ彼女のポテンシャルに期待しているということだろう。梅沢へ好パスを送っていた藤岡も「まだまだこれから伸びると思う」と口にする。

 

 出場した13人全員が得点を記録。JX-ENEOSは11連覇に向けて、好スタートを切った。女王は進化を止めない。藤岡、宮崎、梅沢のプレータイムは昨シーズンより増えていくはずだ。「自分たちがチームを引っ張っていくぐらいの気持ち」と藤岡。指揮官は「一戦一戦、自分たちのバスケットを積み重ねていきたい」と毅然と語り、コートを後にした。

 

(文・写真/杉浦泰介)