大いに盛り上がったラグビーワールドカップ日本大会は“スプリングボクス”こと南アフリカ代表の優勝で幕を閉じた。日本代表はプール戦で強豪アイルランド代表を破るなど4連勝し、史上初めて決勝トーナメントに進出。世界に旋風を巻き起こした。

 

 準々決勝の南アフリカ戦こそ連戦の疲れからか後半に運動量が落ちたものの、プール戦は運動量、連係面、一体感と相手チームを凌駕していた。

 

 ラグビーの成功から、何か学べることはあるか――。

 

 実は、3年前にこの着想から動いたのが当時、日本代表を率いたヴァイッド・ハリルホジッチ監督であった。ラグビー日本代表は2015年のイングランド大会でスプリングボクスを撃破する大金星を挙げた。決勝トーナメントにはあと一歩のところで進めなかったものの“史上最強の敗者”称えられた。日本代表のヘッドコーチ(HC)を務めたのが、今回準優勝したイングランド代表のエディー・ジョーンズ氏。ハリル監督は当時、ラグビー日本代表のHCを退任したエディー氏に会い「どんな強化をしてきたのか」と尋ねている。

 

 彼はこう明かしてくれた。

「彼らは体格で上回る優勝候補の南アフリカ代表に勝った。まさに“デュエル(決闘)に勝てば試合に勝つ”を、彼らは体現したわけです。ほかのスポーツがやれているのに、日本サッカーができないわけがない。だからこそ私は口を酸っぱくして指摘している。

 エディーさんも私と同じような(日本人選手はナイーブという)認識を持っていた。最初『南アフリカに勝つぞ』と言っても選手たちからは“勝てるわけがない”との雰囲気を感じたらしい。だが強化合宿を連続して実施して、1日4部、5部練習で心と体を鍛え上げたそうだ。サッカーでもそれだけの時間があれば変えられる」

 

 ラグビーは候補合宿、強化合宿とキャンプの嵐。集合する機会をできるだけ増やし、大会まで鍛えに鍛えていく。だからこそ本番で結果を得ることができた。イングランド大会に向けた取り組みは、今回の日本大会でも踏襲されている。

 

 これをそのままサッカーに置き換えることは難しい。Jリーグは過密日程にあり、欧州組が大半を占めるようになった今、彼らを国際Aマッチデー期間外に呼び戻すこともできない。昔、年に何度も実施していたA代表候補合宿は時代とともに消えつつあるのが現状である。

 

 もちろんあのときのハリル監督もそれを分かったうえでの発言であった。「集まってもっと練習させてくれないと世界に勝てないぞ」と暗に日本サッカー協会にメッセージを送っていた。だがハリル監督のリクエストに応じて過密日程のなかに候補合宿が組み込まれたことはなかったと記憶している。

 

 今の森保ジャパンのメンバーを見ていると、国内組の数は減る一方だ。ここにJリーグはもっと危機感を持ったほうがいい。Jリーグで活躍しても代表に呼ばれないなら、欧州に飛び出していくのも理解できる。

 

 国内組の利点は、すぐに集まれること。何とか強化を兼ねたセレクションを復活させていく方向に持っていけないだろうか。指揮官の哲学、戦術をより落とし込めるし、その情報は海外組にも伝わる。代表活動を増やすことがつまりは「浸透」「強化」につながる。国内組の数が増えればJリーグの魅力アップにもつながる。試合と関係なく、候補合宿、強化合宿の日程を何とか捻出できないものか。

 

 ハリル監督のようにラグビー代表のマネジメントから学ぶ姿勢は大切だ。今回の成功から何か取り入れられるものはないか。もっと目を向けていくべきだと考える。


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