絶対的なエース、大迫勇也が不在のときにどうするか。

 

 カタールワールドカップアジア2次予選、アウェーのタジキスタン戦(15日)で1トップに入ったのはフランクフルトの23歳、鎌田大地であった。

 

 ゴールを奪えず、逆にボールを失ったところからカウンターを受けてヒヤリとさせられたシーンもあった。全体的には物足りない内容に見えるかもしれないが、トップ下の南野拓実とポジションを交代した後半はこれからの可能性を示すものだった。

 

 トップ下はフランクフルトでも任されている元々のポジション。視野が広く、ポストプレーにスルーパスにいろいろな役割を果たせることが彼の強みだ。

 

 一番の魅力は周囲を活かすキープ力。

 

 激しく体をぶつけてくるタジキスタンに対してキープ力を発揮する鎌田からチャンスが生まれていた。この特色は大迫と共通しており、後半に入ってからは南野や堂安律ら周囲も実にやりやすそうにしていた。彼らチームメイトの動きも、鎌田の頭にインプットされているようだった。

 

 時間をつくって、間をつくって。そこから日本らしいスピードに乗った連係を生み出すことのできるタイプは貴重だと言える。本田圭佑がまさにその役割をこなしていた。時代をさらにさかのぼれば中田英寿の香りも漂う。

 

 ボールを奪われないキープ力があれば、味方は信じて前に向かうことができる。大迫がまさにそう。今はまだ進化中と言えるが、ブンデスリーガで揉まれていけば本田や大迫のような〝絶対的なキープ力〟を身につけることは可能だろう。大迫不在時「1トップ南野、トップ下鎌田」というオプションが増えたのは今回の大きな収穫。個人的には鎌田の1トップもやはり面白いとは思う。もう少し試合を重ねていけば、連係もより深まっていくはずだからだ。

 

 鎌田はチャンスメーカーでもあり、フィニッシャーでもある。

 

 昨季はベルギーのシントトロイデンで13ゴールをマークした。フランクフルトでも”両面”を期待されている。9月22日のホーム、ドルトムント戦では途中出場し、同点となるオウンゴールを誘発している。

 

 ゴール前にポジションを取って、シュートに対する強い意欲がのぞく。それは10日のモンゴル戦でも見ることができた。

 

 後半37分、味方のシュートをGKが弾き、そのボールを頭で押し込んで追加点を奪った。たとえ“ごっつぁんゴール”だとしても、いいところにポジションを取っているからゴールに結びつくのだ。30分の出場時間でチーム最多タイとなるシュート4本。決定力の部分では課題を残したが、本田のような得点への“がっつき感”があった。だからこそ代表初ゴールが生まれたと受け取っている。

 

 昨年、シントトロイデンに移籍する前、彼にインタビューをした。そのとき感じたのが、随分と体つきがたくましくなったことだ。上半身は徹底的に鍛えたところだという。ベンチプレスは50kgを10回3セットで挙げることからスタートし、いつしか70 kgになったと聞いた。

 

「筋量は足りないと感じていましたから。体をぶつけると相手はガッチリしているし、対抗するために筋トレは凄く意識したところ」

 

 あれから1年。モンゴル戦で久しぶりに鎌田を生で見たが、一層たくましくなったように感じた。ブンデスリーガでコンスタントに出られるようになったのも、フィジカル的な上積みがあったからだ。

 

 フランクフルトでレギュラーを張っていれば、代表も定着していくに違いない。

 

 鎌田大地のこれからが実に楽しみである。


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