自身の持つプロ野球のホールド記録を350にまで伸ばした北海道日本ハムのサウスポー宮西尚生のタフネスぶりには頭が下がる。

 

 

 彼はルーキーイヤーの08年から昨季まで、12年連続で50試合以上に登板しているのだ。

 

 いくら出番のほとんどが8回の1イニング限定とはいえ、試合の行方を左右する胸突き八丁のマウンドだ。精神的にも肉体的にもタフでなければ、350ものホールドを積み重ねることはできなかっただろう。

 

 17年には侍ジャパンのメンバーとして第4回WBCにも出場している。今では押しも押されもしない、日本球界を代表するセットアッパーだ。

 

 しかし宮西、自らの持つホールド記録を仮に500に伸ばしたところで、名球会のブレザーに袖を通すことはできない。なぜならホールド数は入会資格条件に入っていないからである。会が定める数字上の資格条件は次の3つ。

 

・通算200勝以上

・通算250セーブ以上

・通算2000安打以上

 

 元巨人の上原浩治は日米通算134勝128セーブ104ホールドと日本人としてはただひとり“トリプルハンドレッド”を達成したマルチな能力を誇るプレーヤーだが、名球会には入っていない。

 

 個人的には名球会会員にあらずんば名選手に非ず、といった風潮には違和感を覚える。もっとも今さら名球会でもないのかもしれないが……。

 

 しかし、一般社団法人である同会の目的には「社会の恵まれない方々への還元と日本プロ野球界の底辺拡大」と、はっきりうたわれている。

 

 前段はともかく、後段の「日本プロ野球界の底辺拡大」を推進するのであれば、セットアッパーを排除する理由はない。

 

 推察するに、03年にやっとセーブが資格条件に加えられたものの、まだ古い会員の中には“先発選民思想”的な考え方が残っているのではないか。時計の針が止まっているように感じられてならない。

 

<この原稿は2020年9月14日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

 


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