14日、日本ラグビーフットボール協会はオンライン会見を行い、この秋の日本代表(ジャパン)の国際試合(テストマッチ)及び代表活動を行わないことを発表した。ジャパンは6~7月に予定していたテストマッチ3試合も新型コロナウイルスの影響を受け、中止していた。今年は1試合もテストマッチを行わず、終了することになる。

 

 初のベスト8入りを果たしたW杯日本大会の翌年、テストマッチはゼロで終えることが決まった。コロナ禍により、6月27日のウェールズ代表戦、7月4日と11日のイングランド代表戦が中止となった。この秋に国外で予定していたスコットランド代表とアイルランド代表とのテストマッチは、シックスネーションズ(欧州6カ国対抗)などの国際試合スケジュールが変更になり、キャンセルとなっていた。11~12月に開催される予定の国際大会「オータムネーションズカップ」への参加も模索していたが、条件が整わず断念した。

 

 会見に出席した岩渕健輔専務理事はこう経緯を述べた。

「秋に向け、いろいろなかたちで、なんとか試合ができないかと前向きに取り組んでまいりました。我々が遠征に行くかたち、あるいは日本に来てもらって国際試合をやるかたち。様々なオプションを考えました」

 日本協会としてはティア1のチームと対戦することを想定し、ジェイミー・ジョセフHCとも毎週のようにコミュニケーションを取っていたという。

 

 岩渕専務理事は「これら(ティア1)のチームと対戦するにあたっては、最低限の準備が必要になる」と口にした。

「考えに考えたんですが、想定していた状況をつくりだすことはできない。選手自身がそういったトップの国々と戦うにあたり、十分な準備をした上でプレーをしてもらう必要があることから、ラグビー協会としてこの秋の代表活動、代表チームの試合については中止という結論を出しました」

 現状ではティア1と戦う準備が担保できないという観点から、この秋のオータムネーションズカップ参加をはじめ、テストマッチの開催を諦めた。

 

 ジョセフHCは「選手の安全を第一に下した決定というのは正しかったと思っています」と語った。

「オータムネーションズカップは代表チームがこれから強化をしていく上で、また代表選手が必要とする経験積むにあたり、非常に大きかったので参加しないことは残念です。ただその一方で今年に関してはポジティブな点もある。それは選手たちがW杯までタイトで忙しい日々を過ごしていた中で、少し一息、ブレイクをとる時間ができたことです。例えばリーチ・マイケル選手に関しては、手術を受け、リカバリーに費やしている。ケガの選手も多かった中で一回立ち止まって一息つくということができる点ではポジティブに考えています」

 

 昨年のW杯日本大会での勢いをそのままにトップリーグ、代表と更なる進化を遂げたいところだったが、予想をもしない壁が立ち塞がった。

「コロナウイルスはコントロールできないもの、これからどうなるかも見えないものになります。ラグビーだけでなくて、どのスポーツも、例えば野球やサッカーも起きている変化に合わせてやりくりをしていると思います。それがコーチにとってのニューノーマル。慣れていかなければいけないものだと思っている」(ジョセフHC)

 

 指揮官は下を向かない。

「次のW杯2023年フランス大会に向け、時間はまだまだたっぷりあると思います。もっと強くなったジャパンをお見せできるようにしたい」

 来年の代表スケジュールも未定だが、岩渕専務理事はこう前を向く。

「来年以降、前向きになれるゲーム、ワクワクするゲームを組まなければいけない。そんなことができたのかという良いニュースをお待ちいただきたい」

 

 21年は1月にトップリーグが開幕予定だ。来年は今年の暗澹とした空気を払拭するようなシーズンとなることを期待したい。

 

(文/杉浦泰介)