手も足も出ない、とは、こういうことを言うのだろう。さる4月10日、千葉・ZOZOマリンスタジアムでのオリックス戦で、千葉ロッテの佐々木朗希が、NPB史上16人目の完全試合を達成した。20歳5カ月、史上最年少での大記録達成は、13者連続奪三振(世界新)、1試合19奪三振(NPBタイ)と記録ずくめだった。

 

 

<この原稿は2022年5月2日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

 

 かつて「完全試合達成には運も必要」と過去の達成者である高橋善正、八木沢荘六、槙原寛己らは異口同音に語っていた。

 

 ところが佐々木の場合、27個のアウトのうち、19個が三振。三振以外の8つのアウトも力でねじ伏せたものであり、ヒット性の打球はひとつもなかった。

 

 NPB史上、完全試合を2回達成したピッチャーはひとりもいない。それだけ難易度の高い記録だが、佐々木のピッチングを見ていると、もう1回くらいやりそうな気がしてくる。実際、17日の北海道日本ハム戦でも8回まで1人の走者も許さずにマウンドを降りた。

 

 周知のように佐々木は岩手県陸前高田市の出身。メジャーリーグで活躍中の菊池雄星(ブルージェイズ)、大谷翔平(エンゼルス)は同郷の先輩だ。

 

 なぜ人口約120万人の岩手県から次々に規格外の怪物が現れるのか。最近、よく、そう聞かれる。身もふたもない答えで恐縮だが、それは偶然だろう。

 

 そんな中、ひとつユニークなデータを発見した。総務省が実施した社会生活基本調査(2016年)によると、岩手県は47都道府県中、一番の早起き県だったのだ。ちなみに早寝は3位、睡眠時間は4位。「寝る子は育つ」というが、佐々木の身長は190センチ、大谷193センチ、菊池184センチと、確かによく育っている。

 

 大記録達成から一夜明けた練習後、佐々木は、こう語った。

 

「(昨日は)午前0時くらいに寝て、起きたのは午前4時。もっと寝たかった。ちゃんと寝たら体の張りも変わってくる」

 

 早寝、早起き、そして熟睡。規則正しい生活が“怪物誕生”を後押ししているようだ。

 


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