試合を締めくくるクローザーの存在が、いかに大きいか。それを証明しているのが今季の阪神である。

 

 

<この原稿は2022年5月2日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

 

 開幕から16試合を終え、1勝14敗1分け(4月13日現在)。セ・リーグワーストとなる開幕9連敗が尾を引き、阪神は首位巨人から10ゲーム差の最下位に沈んでいる。

 

 出遅れの理由について、キャンプ前に世間を驚かせた矢野燿大監督の「今年限り」発言が大きかったと指摘する向きが少なくないが、それは結果論だろう。開幕ダッシュに成功していれば、メディアは「退路を断った監督の覚悟に選手が報いた」と好意的に報じていたはずである。

 

 東京ヤクルトに7点差を引っくり返された開幕戦がケチの付き始めだった。8対7の9回にマウンドに立った新外国人のカイル・ケラーが試合をブチ壊した。このケラーは4日後の広島戦でもリードを守れず、2試合に登板しただけで2軍落ちした。

 

「スアちゃんがいればなァ」

 

 阪神ファンの嘆きが聞こえてきそうである。

 

 昨季まで阪神にはロベルト・スアレスという絶対的なクローザーがいた。昨季は62試合に登板し、1勝1敗42セーブ、防御率1.16。チームの勝ち星が77だから、6割以上に貢献したことになる。

 

 セ・リーグの守護神といえば、昨季は東京五輪での侍ジャパンの金メダルに貢献した広島のルーキー栗林良吏が脚光を浴びたが、セーブ王のタイトルを手にしたのはスアレスだった。

 

 パドレスに移籍したスアレスの後釜として期待されたケラーが使い物にならず、4月13日時点で、12球団で唯一阪神だけがセーブを記録していない。

 

 98年、クローザー佐々木主浩を軸にした理詰めの継投策で横浜(現・DeNA)を38年ぶりのリーグ優勝、日本一に導いた権藤博は、こう語っていた。

 

「先発の一人や二人はいくらでも代えがきくが、後ろが決まらないことにはどうにもならない」

 

 トラは“魔の9回”を克服できるのか。

 


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