(写真:ノーサイドの瞬間、歓喜に沸く埼玉WK。TLに続く“連覇”達成)

 29日、「NTTジャパンラグビー リーグワン2022」プレーオフトーナメント決勝が東京・国立競技場で行われ、埼玉パナソニックワイルドナイツが東京サントリーサンゴリアスを18-12で破り、リーグワン初代王者に輝いた。

 

 リーグ戦1位の東京SGと同2位の埼玉WKによるプレーオフトファイナル。昨季トップリーグ(TL)決勝と同一カードだ。1年前、ラストシーズンとなったTLを制したのは埼玉WK。2003年にスタートしたTLで東京SGと埼玉WKは東芝ブレイブルーパス東京と並ぶ最多5度の優勝を誇る強豪同士の対決だ。

 

(写真:スクラム、ラインアウトといったセットプレーは安定していた)

 5月9日に発表された最新の日本代表候補は埼玉WKがPR稲垣啓太、HO堀江翔太、SO山沢拓也、CTBディラン・ライリーら12人、東京SGがPR垣永真之介、SH流大、齋藤直人など11人とリーグを代表する両チーム。海外のビッグネームも埼玉WKがオーストラリア代表WTBマリカ・コロインベテ、東京SGがオーストラリア代表CTBサム・ケレビ、ニュージーランド代表FBダミアン・マッケンジーと現役バリバリの代表選手が顔を揃える。

 

 昨季の決勝は31-26、今季のリーグ戦では34-17と、いずれも埼玉WKに軍配が上がっている。リーグ戦は不戦敗分を除く1試合平均失点はリーグ最少の18.3点。準決勝でもクボタスピアーズ船橋・東京ベイを12点に抑えた堅守こそが埼玉WKの売りだ。東京SGはマッケンジーが得点王に輝くなどリーグ最多得点&トライを記録した。過去2戦のリベンジに燃えている。

 

(写真:正確なキックで東京SGの全12得点を挙げたマッケンジー)

 この日、両チームを国立で迎えたのが、30度を超える真夏日と今季最多の3万3604人の観客だ。両チームカラーの青と黄色に染まったスタンド。埼玉WKは準決勝から先発4人を入れ替えてPR藤井大喜とNo.8布巻峻介が今季初先発、一方の東京SGはPR小林航とNo.8トム・サンダースが入った。先制したのは東京SG。キックオフから5分間、敵陣で攻め続け、相手の反則を誘った。ここで得たPGをマッケンジーが確実に決めた。

 

 追いかけるかたちとなった埼玉WKは、14分に山沢が約50mのPGを決めて追いついた。22分のPGは決まらなかったが、28分に初トライが生まれる。敵陣に攻め込むと、SH内田啓介がライリーにパス。ライリーからパスを受けたFB野口竜司が前進し、大外のコロインベテに繋いだ。100m10秒台のスピードを誇るコロインベテは相手に捕まることなくインゴールに侵入へ。山沢のコンバージョンキックが決まり、10-3と埼玉WKがリードを奪った。

 

 ケガの松田力也に代わり、今季のプレーオフは背番号10を背負う山沢。37分にはほぼ正面のPGを右に外してしまう。この2本目のプレースキック失敗。キックミスを取り返すビッグプレーを見せる。40分、マッケンジーに突破を許したものの、山沢が必死に食らいつきトライを許さなかった。マッケンジーはボールをこぼし、ノックオン。前半最大のピンチを凌ぎ、10-3のまま試合を折り返した。

 

(写真:タックルを受けながらインゴールにねじ込んだライリー)

 後半は東京SGに押し込まれ、2本のPGで10-9と1点差に。一度は山沢のPGで離したが、マッケンジーのPGで再び1点差に追い詰められた。33分、山沢のパスを受けたライリーが右サイドを突破し、WTBテビタ・リーのタックルを受けながらも右手を伸ばした。18-12とリードを広げた。

 

 時間をうまく使って逃げ切りを図りたいところだったが、試合終了間際に自陣でボールを奪われ、反撃を食らう。ここでWTB尾﨑晟也を捕まえたのが山沢だった。相手を離さず、ボール奪取を狙う。レフェリーが笛を吹き、ノット・リリース・ザ・ボールの判定を下す。すぐにラストワンプレーを知らせるホーンが鳴る。「自分の得意じゃないプレーでもチームに貢献できたのは良かった」と山沢。最後はSH小山大輝が外に蹴り出し、ノーサイド。この瞬間、埼玉WKの優勝が決まった。

 

(写真:司令塔役としてゲームをつくった山沢は試合後、思わず涙)

 ペナルティーの数は埼玉WKが6に対し、東京SGが8と締まった試合となった。稲垣は「80分間通して反則をなるべく少なく、かつプレッシャーを掛け続けることがテーマだった。今日はそれが遂行できたと思います」と胸を張ったように、埼玉WKのプレッシャーが東京SGをリズムに乗せずノートライに封じた。 鉄壁の守備陣はプレーオフに入っても10失点、12失点と堅かった。ブレイクダウンでの強さは健在で、加えてラインアウトディフェンスで相手にプレッシャーをかけて主導権を握った。

 

 ロビー・ディーンズ監督は「非常にタフな試合、リーグワン初めての決勝にふさわしかった。今季無敗(不戦敗を除き)でここまで来られたチームとして正しい結果を得られてうれしい」とTLラストシーズンからリーグワン初年度の連覇達成を喜んだ。キャプテンとして2連覇に貢献したHO坂手淳史はこう胸を張った。

「最後の1秒までどちらに転ぶかわからないタフなゲーム。ワイルドナイツとして勝利を手にすることができて、みんなを誇りに思う。1年間やってきたことが出せた」

 

(文・写真/杉浦泰介)