ひと味違う鎌田大地がそこにいた。

 

 森保ジャパン4連戦の初戦となるパラグアイ代表戦。ドイツ1部フランクフルトで主力としてEL優勝を果たし、勢いに乗る彼が4-3-3のインサイドハーフでどのような働きを見せるかが、この日の2大注目ポイントと言ってよかった(もう1つはシュツットガルトから初招集、伊藤洋輝の左サイドバック出場)。

 

 結論から言えば、申し分ない働きだった。

 

 1トップに入った浅野拓磨をフォローしつつ、キープ力、展開力によって攻撃に厚みをもたらす一方で、今シーズンのフランクフルトで示してきたような球際の強さや出足の鋭い守備の迫力もある。そして何より、目に見える結果を残した。

 

 先制して迎えた前半42分にはスルスルとペナルティーエリア内に走り込み、堂安律のクロスに対し、身を投げ出すようにしてヘディングで合わせた。後半24分には右サイドからのスルーパスに反応してゴール前で倒されてPKをゲットしている。推進力を持って前に出ていく力が、パラグアイの脅威となっていた。

 

 森保ジャパンではこれまで4-2-3-1のトップ下を主に担ってきた。4-3-3への主戦システム変更に伴ってメンバーから漏れるようになったが、インサイドハーフへのチャレンジは本人からすればむしろ望むところだったに違いない。2年ほど前に彼がこう語ってくれたことがある。

 

「フォワードで点を獲ってしまうと、そこのポジションがいいんじゃないかってなりがちですけど、日本代表でやるのであればトップ下かボランチの6番のところが一番合っているとは思っています。何でもできるところが(自分の)いいところ。トップ下のもう1つ後ろのポジションが適正じゃないですかね」

 

 フランクフルトではシャドーのポジションを与えられているが、インサイドハーフのほうがしっくりくると感じなくもない。運動量や最大の持ち味である構成力が活きる。大迫勇也が不在の場合は、時間をつくる役割も担える。守田英正、田中碧とはまた違う特徴があり、今後に期待を膨らませるパフォーマンスであった。

 

 欧州での破竹の勢いを、日本代表にもたらす。

 

 かつて本田圭佑がそうだった。2010年南アフリカワールドカップの半年前にオランダ1部VVVフェンローからロシア1部CSKAモスクワに移籍し、3月の欧州CL決勝トーナメント1回戦のセカンドレグ、セビージャ戦では1ゴール1アシストの大活躍によってクラブ史上初のベスト8入りに貢献した。国内リーグでも優勝して日本代表に合流。彼の成長に目を留めた岡田武史監督は本大会において1トップで起用し、それがハマったことは記憶に新しい。カメルーン戦の決勝点やデンマーク戦の直接FKなど、大ブレイクを果たすことになった。

 

 鎌田にも同じことが期待できる。

 

 長谷部誠とつかんだ日本人選手によるEL優勝は、小野伸二以来20年ぶり。準々決勝ではあのバルセロナを下している。この事実は、日本代表チームにも大きな希望を与えたに違いない。

 

 11月に開幕するカタールワールドカップではスペイン代表、ドイツ代表と優勝候補2チームと同じグループに入った。グループリーグ突破は難しいチャレンジになるものの、決して不可能ではないのだと勇気づけてくれる。

 

 日本代表に合流して即、パラグアイ戦で結果を残してしまうあたりも、何か「持っている」感じがする。

 

 あのときの本田圭佑にどこか重なる鎌田大地がいる。

 

 森保ジャパンの希望となれ――。


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