(写真:MVDのISSEI<左>とMCDのKEITA TANAKAディレクター)

 30日、「第一生命 D.LEAGUE AWARDS SHOW 2021-22」が ホテル雅叙園東京で行われた。最優秀選手賞にあたる「MVD OF THE YEAR」(MVD)はKOSÉ 8ROCKS(コーセーエイトロックス)のディレクター兼ダンサーISSEIが2年連続の受賞。最優秀ディレクターを決める「MOST CREATIVE DIRECTOR」(MCD)にはKADOKAWA DREAMS(カドカワドリームズ)のKEITA TANAKAが選ばれた。公式アプリのファボ数が最も多いダンサーに与えられる「MOST FAV DANCER」にはFULLCAST RAISERZ(フルキャストレイザーズ)のKTR、そのチーム賞にあたる「MOST FAV TEAM」はavex ROYALBRATS (エイベックスロイヤルブラッツ)が輝いた。

 

(写真:いつもと違う雰囲気の出で立ちも、ダンスで登場する各チーム)

 チャンピオンシップ(CS)の熱戦から25日後、雅叙園でシーズン中とは趣を異にするAWARDS SHOWが開催された。各チームのダンサー、ディレクターがドレスアップし、普段のダンス衣装とは違った雰囲気で会場を彩った。

 

 この日の主役はISSEIだった。2シーズン連続MVD。昨季はCSで敗れて4位、今季はリーグ制覇を果たして迎えたAWARDS SHOWだ。各チームのディレクター、ダンサーの投票とはいえ、MVD受賞は当然かと思えた。そのことを本人に問うと、首を横に振った。

「シーズンを通して全Dリーガーがいろいろな想いを持って戦っていた。それぞれにドラマがあり、“絶対オレが”なんて感覚はなく、誰が獲ってもおかしくないと思っていました」

 

(写真:MVD受賞が決まった瞬間、穏やかな笑みを浮かべたISSEI)

 受賞式の壇上で「みんなと一緒に獲ったMVD」と語っていた。

「8ROCKSだけが頑張ったわけではない。Dリーガー全員が頑張ったからCSもあれだけの人が見てきてくれた。僕はみんながMVDだと思っています」

 チームメイトのみならず、競い合った他チームのダンサーたちも称えた。それが偽らざる本音。彼の言葉の端々にはダンスに対する情熱が溢れているように感じる。

 

 Dリーガーとしては、これで一区切りだ。「D.LEAGUEでいろいろなことを経験した。充実した2年だった」とISSEI。今後はダンサーとして、どこに向かっていくのか。

「ひとつの目標を決めるのが苦手なんです。目標がない方が僕はいい。頂点に対するこだわりはなく、追われる、守っていかなければいけない立場というのも好きじゃないんです。いつまでもレベルアップし、いけるところまで登りたい。常に新しいものに敏感で、本気で向き合いたい。ダンスを使った表現者でずっといたいし、ダンスを応援していきたい。みんなから“どこまでISSEI行くん!?”と言われるくらいのダンサーになりたいですね」

 

 リーグは更なる進化へ

 

(写真:公式アプリのファボ数が多かったKTR<前列中央>とROYAL BRATS)

 自身もダンサーである神田勘太朗COOが「ダンスがある人生が当たり前になるように」とスタートしたD.LEAGUE。初年度は新型コロナウイルス感染拡大により無観客でのスタートを余儀なくされた。2シーズン目の観客動員はD.LEAGUEの平野岳史CEOによれば、「最終戦、CSのチケットは完売だった」という。ISSEIも「お客さんの前で踊れて幸せだった」と振り返った。

 

 反響はチケット売り上げのみに表れたわけではない。DREAMSのKEITA TANAKAディレクターは「ダンスを教えている子供たちが『カドカワドリームズに入りたい』と言ってくれる。認知が広がっていると感じますね」と口にするように裾野は着実に広がっている。ダンサーたちが輝ける場所のひとつとして確立されつつあるようだ。

 

(写真:功労賞を授与されたテリー氏<右>とプレゼンターの平野CEO)

 今シーズン、レギュラーエンターテイナージャッジを務めたテレビプロデューサーのテリー伊藤氏は、功労賞を受賞した席でダンスの魅力を述べた。

「世界中にたくさんのスポーツがありますが、ダンスが最も可能性がある。なぜかというと始める時にお金がかからない。他のスポーツは場所、道具が必要になる。例えば今日テレビを観て、刺激を受けたら今すぐにでも始められる。こんなスポーツはないと思います」

 

 そしてDリーガーを含めた関係者に向かって、こうエールを送った。

「ダンスを知っている人たちにとってはメジャーかもしれないけど、社会現象にはなっていません。例えばメジャーリーガーの大谷(翔平)は圧倒的に社会現象になっています。ダンスは誰しもが今日できるスポーツなのにも限らず、そうなっていない。皆さんが世の中をひっくり返してください」

 

(写真:来シーズンに向けて意気込みを語る神田COO)

 運営側も、現場スタッフも現状で満足する気はない。神田COOは「ダンサーが主役になれるように、私たちはもっと頑張っていきます」と力強く宣言した。KEITA TANAKAディレクターも進化のベクトルを自チームだけでなく、リーグにも向けている。

「来季はチームとして成長、成熟を掲げて戦おうと思っています。それをリーグにも反映し、ダンサーが成長、成熟し、他のプロスポーツと肩を並べられるような存在になりたいです」

 

 この日、来シーズンが10月開幕と発表された。ブレイクダンス世界大会(Battle of the Year)で3連覇の実績を持つSTEEZがディレクターを務めるValuence INFINITIES(バリュエンスインフィニティーズ)が新たに加わり、12チームで覇を競う。切磋琢磨による各チームのパフォーマンス、そしてリーグ自体がどんな進化を見せてくれるのか。より一層楽しみである。

 

(文・写真/杉浦泰介)