27日に関東甲信地方、東海地方、九州南部の梅雨明けが発表されました。いきなりの猛暑にびっくりしていますが、皆さんはいかがおすごしでしょうか。くれぐれも体調には気を付けてください。さて、日本代表はこの6月に4試合をこなし、2勝2敗でした。そして7月19日からはE-1選手権(参加国は日本、韓国、中国、香港の4カ国)が開幕します。代表について今回も熱く語っていきましょう。

 

 上背のあるサイドバックのメリット

 6月シリーズでは一時的に3バックを試したのみで基本は4バックで臨みましたね。初招集のDF伊藤洋輝(シュツットガルト)は左サイドバックとセンターバックでプレーしました。特にサイドバックとしては良かったのではないでしょうか。左利き、かつ187センチの選手がサイドバックに入るのは魅力的ですね。特に守備時に身長の高さはモノを言います。逆サイドからのクロス対応時、左サイドバックは内側に絞ります。その際、上背があれば相手FWと互角に競り合えます。世界の舞台で戦うのなら、これは大きな武器になるでしょうね。

 

 さて、FIFAランキング1位のブラジル戦について少しだけ。スコアは0-1の敗戦でした。数字的には強豪に善戦したように感じますが、試合を支配され、余裕はなかったですね。失点はPKのみだったので、守備に関してはある程度自信を深めたでしょうが、武器だったサイド攻撃は見事にシャットアウトされました。

 

 そしてキリンカップの2戦目、0-3で敗れたチュニジア戦後、MF三笘薫(ブライトン)は「約束事がない」とコメントをしたようです。僕は選手がこういった危機感を発信するのは今の代表には必要かなと思います。

 

 構えているところに突っ込む日本

 日本はこれまで三笘とMF伊東純也(ヘンク)のサイドからのドリブル突破を武器に白星を積み重ねてきました。ところが、ブラジルやチュニジアの守備陣を崩すには至らなかった。確かに彼らの突破力は大きな武器ですが、今の状況を見ると相手のDFが待ち構えているところにドリブルを仕掛けに行っているように映ります。

 

 こうなってくるといくらアタッカーのトップスピードやドリブルスキルが突出していても守る方はさほど苦ではありません。DFの能力が高くなればなるほど、なおさら楽に対応されてしまう。DFが構えているところに日本がボールを運んでくれているようなものですから。

 

 誰かが囮になる、スペースを空ける、相手DFを吊り出す、誰かがそのスペースを使う。キーマンがこの角度でボールを持ったら、周囲はこう動く、と言った約束事を決めて、それがシステムチックに表現できないと三笘と伊東は苦しい思いをし続けるでしょう。三笘が「約束事がない」と言ったのは言い得て妙だと感じました。僕がこのコラムでも常々言っていたことが露呈したなぁとも思います。

 

 さて、7月はE-1選手権があります。個人的にはFW上田綺世(鹿島アントラーズ)に注目! と思っていたのですが何やら上田の身辺が騒がしくなってきました。27日、ベルギーリーグ1部のセルクル・ブリュージュから正式オファーが届き、移籍はほぼ確実とのことです。ベルギーリーグ開幕は7月下旬です。スケジュール的に、上田のE-1選手権出場は現実的には難しいのでしょうか……。とはいえ、海外移籍は上田の目標でもありました。ぜひとも、向こうでもゴールネットを揺らし続けて欲しいものです。

 

 さて、鹿島は10ゴールのトップスコアラーを失うことはほぼ確実。どうしたものか……と思いますが、FWエヴェラウドとFW染野唯月の奮起に期待しましょう。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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