6月に日本代表は4試合をこなします。2日=パラグアイ代表戦、6日=ブラジル代表戦、10日=ガーナ代表戦、14日=チュニジア代表もしくはチリ代表戦ですね。

 

 僕はこのシリーズ、立ち上がりから攻撃的に行ってほしいと思います。岡田武史監督第2次体制時、日本はW杯前に大きく調子を崩していました。ですが、親善試合などで膿みを出し切ったことが奏功した典型例だったと思います。

 

 中途半端な展開になり良い点も悪い点もうやむやになるより、前線からアプローチしてどんどん勝負していくべきです。今回のW杯は欧州主要リーグが中断し、その1週間後に大会が開幕します。海外組が呼べるのはこの6月がもうラスト。だからこそ、強豪国と親善試合ができるこの機会、攻撃的な展開にもっていき、どこが通用し、どこが通用しなかったのかをハッキリさせる必要がある。

 

 個人的には3バックを試す時間はもうないと思います。中盤から前はいろいろ変更させてもいいですがDFの枚数はもう4枚で固定すべきです。流れの中で一時的に3枚になるのは許容範囲ですが、スタートの顔ぶれは4枚のメンツがいいでしょう。ピッチの横幅をフォローする距離がかわりますから、しっかりと強豪国相手に4枚での守り方を確認すべきかなと考えます。

 

 この6月シリーズのメンバーにシュツットガルトのDF伊藤洋輝が初選出されました。身長188センチの左利き、センターバック、ボランチ、サイドバックをこなせるユーティリティープレーヤーです。興味深く彼のプレーを見たいと思います。カタール入りを狙う彼にしてみれば最初にして最後のチャンスでしょう。

 

 替えがきかない鈴木優磨

 さて、待望論が絶えないのが僕の古巣、鹿島アントラーズのFW鈴木優磨ですね。今季リーグ戦だけで6ゴール6アシスト。Jリーグの中ではちょっと抜けた存在ですね。ベルギーから帰ってきて動きの質やポジショニングに変化がありますね。相方の上田綺世をいかす意味合いもあるのでしょうが、サイドに開いて決定的なクロスを入れたり、中盤に下がって見事なスルーパスを出したりと大活躍を演じています。

 

 代表に興味がなさそうなコメントも見聞きしますが、プロサッカー選手やっていてW杯に出たくない選手っていますかね(笑)? 「鹿島に集中している」とよく言ってくれていますが、それはあくまでも「まずは鹿島での活動が大事、鹿島で結果を出すことが大事」ということだと思うんです。鈴木はアントラーズで替えがきかない選手になってくれました。彼が牽引するアントラーズの今後が楽しみだし、滑り込みW杯当選を期待しています。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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