さて、7月はサッカー・E-1選手権がありましたね。森保ジャパンは4大会ぶり2度目の優勝を果たしました。カタールW杯開幕を4カ月後に控えた今、Jリーガーたちにとっては実質、ラストチャンス。E-1選手権優勝で幕を閉じたのは素晴らしいですが、この大会ならではの難しさも垣間見えました。

 

 厳しいですが僕の目には、この中からW杯本大会に入りそうなメンバーはいないのかな、と映りました。得点は取れているものの、シュートの前段階の動きの質をもっと向上させないと海外組を含むレギュラー陣に割って入るのは難しいのでは、と感じました。

 

 今回は横浜F・マリノスから7名、サンフレッチェ広島から6名が選出されたこともあり、小グループ(ポジションが隣り合う選手同士)の連係面はさほど問題なかったですが、GKからFWまでを含めたビルドアップや囲い込みなど大きな枠で捉えると、僕としては満足いくものが見られたとは言い難かった。もちろん、急に集められた選手たちの苦労は察しますけども……。

 

 元々、この大会はダイナスティカップから始まりました。東アジアのサッカーレベル向上のためにスタートしています。インターナショナルウィークデイに開催されるわけでもなく、おのずと国内組編成になる。なおかつ今年のW杯は秋開催と、読者の皆様もこの大会をどうとらえていいのか難しかったしょう。

 

 Jリーグ底上げという観点

 

“カタールW杯メンバー選考の場”と捉えると難しい今回の選手権でしたが、Jリーグの底上げという観点で見ればまた感じ方が変わってきます。普段は招集されにくいJリーガーが実際にA代表監督と活動できるのは大きな意味があります。どういうことを求めているのか、どういったゲームプランを考えているのかを直接、見聞きできるのは大きな刺激になるはず。今回受けた刺激を所属クラブに持ち帰り、是非、自身の成長につなげてほしい。それが結果的にうまくいけば4カ月後、はたまたもう少し先の未来で花が咲けばよいと思います。

 

 日本が韓国に3-0で勝利しました。韓国は4連覇がかかっていることもあり、少し気合いが空回りしているように見えました。ただ、韓国にとってソンフンミンの有無は大きいですね。絶対的存在がいることは素晴らしいです。彼を中心に統率が取れますから。一方で、彼が不在になると途端にもろさがでますね。今後もE-1選手権を通じて、日本も韓国も切磋琢磨できればいいですね。

 

 さて、海外組の移籍も活発ですね。僕はプレミアリーグのリバプールからフランス1部のモナコに移籍した南野拓実に注目しています。日本代表では試合に出られますが、リバプールに戻るとなかなか出場機会に恵まれませんでした。やはりサッカー選手である以上、90分の試合の流れを体に染みつける必要があります。ペース配分、勝負時の嗅ぎ分けといった感覚的なものは試合に出続けないとなかなか、養われない。モナコでレギュラーを勝ち取り、しっかりと感覚のズレを修正してもらいたいです。彼のクラブでのスタメン奪取成功が、4カ月後の日本代表の勝敗にも大きくかかわってくると思います。ぜひ、頑張ってほしいです。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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