(写真:試合終了まで逆転勝ちの可能性にかけたが惜しくも届かなかった)

 9日、「リポビタンDチャレンジカップ」が東京・国立競技場で行われ、世界ランキング10位のラグビー日本代表(ジャパン)が同3位のフランス代表に15-20で逆転敗けを喫した。フランスには先週に続き連敗。ジャパンはこの夏のテストマッチシリーズを2勝2敗で終えた。秋には欧州遠征を控え、フランスとは敵地で対戦する。

 

 対フランス初白星はあと一歩のところで届かなかった。ジャパンはこの夏、最後のテストマッチ、改修後代表戦初開催となる国立で来年のW杯ホスト国にして優勝候補を迎えた。

 

 過去の対戦成績はフランスの10勝1分け。一度も勝ててないジャパンだがジェイミー・ジョセフHC就任以降は1敗1分け。5年前の1分けは敵地での価値あるドローだ。しかし、フランスは着実に力を付けており、3月のシックスネーションズをグランドスラム(全勝)で制し、テストマッチ9連勝中と勢いに乗っている。SHアントワーヌ・デュポン、SOロマン・ヌタマックが来日していないとはいえ、ジャパンにとって格上であることに変わりはない。

 

(写真:この日も積極的に声を出し、チームメイトとのコミュニケーションを図っていた齋藤)

 23-42で敗れた愛知・豊田スタジアムでの第1戦からジャパンは先発3人を入れ替えた。LOは身長2m1cmワーナー・ディアンズ、2m2cmサライナ・ワクァの2m超コンビを起用した。SHは茂野海人に替えて齋藤直人をスタメンに。リザーブにはHO堀江翔太、SO田村優という経験豊富なベテランが控えた。対するフランスは先週から先発1人を変更。FBマックス・スプリングが代表デビューを果たした。

 

 先制点はフランスに奪われた。ファーストスクラムでコラプシングの反則をとられるなど、自陣に攻め込まれた。9分、ラインアウトモールから最後は右に展開され、大外のWTBマティス・ルベルにトライを奪われた。SHマキシム・ルクにコンバージョンキックも成功され、ジャパンは出だしで7点のビハインドを負った。

 

(写真:2トライを挙げるなど好調をアピールしたベテランの山中)

 ジャパンの反撃は12分、見事なキックカウンターでインゴールまで辿り着いた。自陣でボールをキャッチしたWTBゲラード・ファンデンヒーファーが中央に展開し、自身も左サイドに動き出す。FB山中亮平、WTBシオサイア・フィフィタ、CTB中野将伍、CTBディラン・ライリーとパスを繋ぐ。ライリーが内を突き、空いた外のスペースに再びファンデンヒーファーがボールを受けた。縦に大きくゲインし、最後はフォローしていた山中へパス。山中がインゴール左に飛び込み、流れるようなパスワークで5点を返した。

 

 SO李承信がPGを決め、8-7と逆転。前半終了間際にも流れるようなパスワークで追加点を奪う。センターライン付近でボールをターンオーバー。斎藤が左に展開すると、李、山中、HO坂手淳史、中野、坂手、FLリーチ・マイケルとテンポ良く繋ぐ。リーチが縦に突破し、インゴール目前に。最後はフリーの山中にパスをした。山中はボールをインゴール中央まで運んだ。李がコンバージョンキックを決め、15-7で前半を終えた。

 

 フランス戦初勝利まで、あと40分。しかし、世界ランキング3位の強豪も黙ってはいない。4分、20分とPGを決められ、2点差まで迫られた。ジャパンは堀江、田村らを投入し、流れを引き戻そうとしたが、“レ・ブルー”の圧力に屈した。特にセットプレーでは苦戦。31分、スクラムで押し込まれ、ぽっかり空いたスペースにSHバティスト・クイユーに突かれた。逆転トライ、コンバージョンキックを決められ、15-20。この試合初めてのリードを許した。

 

(写真:34分、レフェリーはトライをコールし、歓喜に沸いたが…)

 金星は手が届きそうで、スルリとこぼれ落ちた。34分、ラインアウトからNo.8テビタ・タタフが2、3人を弾き飛ばし、インゴールに迫った。レフェリーは一度トライと判定したものの、TMO(ビデオ判定)の結果、ボールをグラウンディングできておらず、ノックオンとなった。その後も敵陣深くまで侵入しながらトライが奪えないままノーサイドの笛を聞いた。

 

 キャプテンの坂手は「悔しいです。勝つべきゲームでした」と振り返る。「全員が役割を理解した上でゲームに臨めたと思っている。最後は遂行力。もう一歩、その一歩がすごく大きいと感じました」。フランス代表のファビアン・ガルティエHCによれば、「前半リードされたのは今シーズン初めて」という。“強豪に善戦”と見ることもできるが、リーチが試合後口にしたように「“日本代表はいい試合で終わる”というクセをつけないようにしたい」と、選手たちは手応えを掴みつつも、“勝てるゲームを落とした”と捉えている。今後も勝負所での決定力がジャパンの課題となるだろう。

 

(写真:2戦連続で「10」を背負った李。このシリーズで攻守に狙われたが、貴重な経験を得た)

 これで夏のテストマッチシリーズは2勝2敗。この4試合で21歳の李をはじめ、10人以上が代表デビューを果たした。ジョセフHCは「チームはここからステップして前に進んでいけるのではないかと思っている」と前を見据えた。秋にもティア1との対戦を予定。11月の欧州遠征ではイングランド、フランスに挑む。

 

(文・写真/杉浦泰介)