(写真:ガードを固めた井岡<左>とニエテス)

 13日、WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチが東京・大田区総合体育館で行われ、王者の井岡一翔(志成)が、挑戦者で同級1位のドニー・ニエテス(フィリピン)を3-0の判定で下し、5度目の防衛に成功した。通算戦績は、井岡が29勝(15KO)2敗、ニエテスが43勝(23KO)2敗6分となった。

 

 試合開始のゴングが鳴ると、3年7カ月前と変わらぬニエテスが、井岡の目の前にいた。2018年の大みそか、ともに世界4階級制覇を懸けて激突した最初の対戦は、1-2と僅差の判定負け。スーパーフライ級2戦目だった井岡が攻め急ぎ、老練のニエテスに効率よくポイントを奪われたことが敗因だった。

 

(写真:カウンターに注意しながら強打を放った)

 リング上でニエテスの健在ぶりを確認した井岡は、前回の反省を生かし、ガードをしっかり固めながらジャブで様子を見た。2ラウンド以降は、右ストレートや左フックなどで徐々に手数を増やした。

 

 プレッシャーをかける井岡に呼応するように、ニエテスもエンジンを上げてきた。ノーモーションから繰り出す鋭いジャブと、打ち終わりを狙ったアッパーで井岡に対抗する。ただ、互いに軽快に足を動かし決定打は許さなかった。

 

(写真:10回、ドクターチェックで試合が中断する)

 一進一退の攻防が続く中、試合が大きく動いたのは、8ラウンドだった。井岡のパンチでニエテスが右目上をカット。すると、10ラウンドにも「手応えがあった」右のオーバーハンドで左目上を切り裂いた。ドクターチェックをはさんだ後、動きこそ変わらないものの、流血したニエテスの表情はやや強張っていた。

 

 最終ラウンドまで、「完全燃焼したかった」と強打で攻め続けた井岡。試合終了のゴングが鳴ると、勝利を確信し、右拳を突き上げた。判定結果は、フルマークひとりを含む3-0。KO勝利こそならなかったが、完勝で17年以上負けのなかった40歳のニエテスにリベンジを果たした。

 

(写真:試合終了直後、勝利を確信し右拳を上げた)

「やりたい攻撃は他にもありましたし、ラウンドを重ねるごとにポイントで有利に立っているのも分かりましたが、やはりニエテスの巧さが光っていたので、相手がやりづらい戦い方を貫きました。前回の対戦から、過ごしてきた時間の違いを証明できたので良かったです」

 

 自身の持つ日本人の世界戦最多勝利記録を20に伸ばした井岡は、試合後のリングでファンに誓った。「大みそか、統一チャンピオンになる姿を見せます!」。因縁の相手へ借りを返した33歳が、スーパーフライ級2本目のベルトを獲りにいく。

 

(文・写真/古澤航)