オール国内組で臨むEAFF E-1選手権。森保ジャパンは初戦(19日、カシマスタジアム)で香港代表と対戦し、6-0と快勝した。実力差を考えれば妥当な結果であったものの、興味深いと感じたのは森保一監督のマネジメントだ。

 

 首位を走る横浜F・マリノスから大量招集し、準備期間がなかったこともあってかスタメンには畠中槙之輔、岩田智輝、藤田譲瑠チマ、水沼宏太、西村拓真とズラリと並べた。フォーメーションもF・マリノスが使う4-2-3-1。森保ジャパンも4-1-4-1移行前は同じシステムであり、うまくマッチしたと言える。サイドから山根視来、水沼が積極的にクロスを放つ攻撃もF・マリノスのエッセンスが色濃かった。

 

 6月のブラジル代表戦ではクロスは上げるが、中と合わない場面が目立った。ゴールを奪うには、クロスに対してどのようにゴール前に中で待つ選手がどのように入っていくか。その課題に取り組もうとする指揮官の意図は伝わってくる。

 

 11月に開幕するカタールワールドカップは、登録メンバーは3人増えて26人になる。入れ替えの少ないチームだけに、今回のE-1メンバーのなかで候補に入ってきそうなのは谷口彰悟、山根、谷晃生の3人くらいだとは思う。ただノーチャンスとも思わない。3試合通じて森保監督の目に留まれば、サプライズの可能性は少なくともある。

 

 香港戦での左サイドは東京五輪世代の杉岡大暉、相馬勇紀のコンビで組ませている。個それぞれの能力を見極めるのも大事だが、「ユニット」で見ているようにも感じる。

 

 言うまでもなく今回のワールドカップは特殊だ。欧州の主要リーグが中断して10日後には開幕を迎えるため、準備期間が圧倒的に足りない。欧州組がメンバーの9割方を占めると思われる日本代表にとっても、デメリットだ。その分、クラブチームでやっていることが大事になる。スペイン代表ならバルセロナ、ドイツ代表ならバイエルン・ミュンヘンがチーム構成の母体になるため、さほど影響は受けないだろう。日本がメンバーを固めてきたのは、ユニットとして高めていきたいから。筆者はそのように受け止めている。

 

 森保監督にインタビューした際、彼はデメリットとは受け止めていなかった。

「日本人選手は適応能力が高く、目の前のことに向けて協力しながら合わせていくことができる。すぐに同じ絵を持てる能力って言うんですかね。準備期間がないとしても準備力のメリットを活かせれば逆にパワーに変えられるんじゃないか」

 

 昨年10月のアジア最終予選、ホームのオーストラリア戦で4-1-4-1にスパッと変更できたのもインサイドハーフに田中碧、守田英正という“川崎フロンターレ出身ユニット”を採用。だから準備期間が少なくてもやれると踏んだのだろう。そしてそれは見事にハマった。

 

 この成功体験もあって“F・マリノス一気呼び”をテストしてみたとも言える。

 

 個人的には岩田&藤田のボランチユニットが面白いと感じた。両者とも運動量があり、守備の出足も鋭い。あうんの呼吸もある。彼らの守備強度がF・マリノスの超攻撃を生み出しており、香港戦だけでは何とも評価しがたいものの、最後の韓国代表戦(27日)ではもう一度見てみたい。藤田は一つのきっかけを与えれば大化けしそうな雰囲気があり、岩田はユーティリティが売り。韓国戦が勝負になるだろう。

 

 F・マリノスからは7人、その次に多いのがサンフレッチェ広島の6人だ。24日の中国代表戦はひょっとするとサンフレッチェがベースに置く3バックをテストするかもしれない。森保監督が日本代表に持ち込むヒントを探しているのは間違いない。


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