第185回 岩政新監督に望むこと

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 この8月、僕の古巣である鹿島アントラーズに大きな動きがありました。レネ・ヴァイラー氏と契約を解除し、岩政大樹コーチが監督に昇格しました。今回は岩政新監督に期待することを語ろうと思います。

 

 7月にエースストライカー・上田綺世がベルギーに移籍した影響もあり、アントラーズはなかなか勝ち星に恵まれませんでした。そこで監督交代に踏み切りました。チームの立て直しをどのように進めるのかを見ていきたいですね。

 

 まずは選手たちにゲームプランを浸透させるべく動いているようです。岩政体制になり1勝1分け1敗ですが、可能性が低いクロスボールが減り、ポゼッション志向に移行しています。丁寧なビルドアップから試合を支配しようと見えます。

 

 1対2で川崎フロンターレに敗れはしたものの、今後に向けて手ごたえを掴んだのではないでしょうか。川崎Fのお株を奪う支配率(61%)でした。シーズン中での監督交代は非常に難しいと思います。一気にチームを変えようとしても選手たちは混乱していまいます。“あれも、これも、それも”とたくさん詰め込むよりも、“求めるものはこれ(ビルドアップ)だけ!”と絞り込んで提示している岩政監督のやり方には大賛成です。シーズン中にチームが空中分解しかねないデリケートな時期での引き継ぎですから部分、部分のパーツを徐々に構築していく丁寧なチーム作りが見受けられます。

 

 岩政監督に求めたい2つ目は、精神的支柱となる選手の育成です。かつてならば、本田泰人、秋田豊、中田浩二、小笠原満男……。戦う姿勢を若手に示せる存在は不可欠です。上田の移籍と監督交代で出場機会を伸ばしているのが、キャプテンの土居聖真です。おそらく岩政も「リーダーシップを執ってもらいたい」と願っているでしょう。チームには軸になる人間が不可欠。ユースからの生え抜きで誰よりもクラブの哲学を理解している聖真には僕も期待しています。

 

 センターバックの関川郁万にも注目しています。リーグ序盤は積極的に縦パスを供給しようとして相手にカットされる場面がありました。しかし、最近は素晴らしいパスを最終ラインからバシバシ通していますね。夏を乗り切り、秋頃にはさらに成長していると思います。大物ルーキーとして高卒入団し、彼に期待しているファンも多いでしょう。

 

 アントラーズは大きな過渡期を迎えています。時代に合わせて変化していくことは大切ですが、ジーコとともに僕たちが築いてきた「サッカーに対する姿勢、サッカーに対する取り組み方」といったところは不変であってほしいですね。

 

 さてさて、最後に日本代表について触れましょう。9月にヨーロッパ遠征をおこない、アメリカ代表、エクアドル代表と対戦します。この遠征がワールドカップ前の最後のすり合わせの場になります。守備陣は本番仕様のメンバーで固める方がベターでしょう。一方の攻撃陣は当落選のメンバーに最後のチャンスを与えるのも僕はアリだと思います。そうすることで主力にも刺激を与えることができます。最後まで競争意識を持たせることも大事だと思います。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。

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