(写真:昨季より早いシーズンの始動となった。初のD1に向けてハードな練習を積んでいる)

 5日、『JAPAN RUGBY LEAGUE ONE』(リーグワン)の三菱重工相模原ダイナボアーズが新体制での練習を報道陣に公開した。12月開幕予定のディビジョン1(D1)に向け、グレン・ディレーニー新HC、石井晃GM、選手らが意気込みを語った。

 

 昇格組・相模原DBが初のD1に挑む。1971年創部の相模原DBは、前身のトップリーグでの経験は3シーズンのみ。リーグ戦では2勝しか挙げていない。D2でスタートした昨季はリーグ戦を9勝1分けで順位決定戦に進出。1~3位決定戦で2敗を喫したものの、NTTコミュニケーションズシャイニング東京ベイ浦安(現・浦安D-Rocks)との入替戦を制し、D1昇格を果たした。

 

(写真:現役時代は日本でプレー。昨季、「恩返しの気持ち」で日本に帰ってきたディレーニー新HC)

 4シーズンチームを率いたグレッグ・クーパーHCが退任。新指揮官には昨季ディフェンスを担当したアシスタントコーチのグレン・ディレーニー氏が就任した。「チーム強化のために必要だった」と石井GM。新HCについて「彼の人間性を評価している。細かく言うと人の話をよく聞くし、対話を大事にする。選手からの信頼も厚い」と語った。

 

 ディレーニーHCは「次がスタート。チャレンジになるので集中していきたい」と意気込む。7月18日から新体制は始動した。

「最初の2、3カ月で身体をつくり直す。細かいところを修正し、シーズンでいいパフォーマンス出せるように今は調整しています」

 今はD1で戦える地盤を固めている段階だ。プレシーズンから“全緑”でチームを鍛え上げる。

 

(写真:新任の宮本ACによるスクラム練習。FW陣が身体をぶつけ合った)

「我々はリーグワンで常勝チームを目指す。そのために上位チームと同じことをやっていては勝てない。今のチームにはハードワークが必要。高いものを目指さないと違う景色は見えない」

 そう石井GMが口にするように、厳しい練習を選手に課している。加入4季目で昨季のバイスキャプテンを務めたPR/HO細田隼都は「今年は最初からハード。毎日乗り切るので必死です」と語りながらも、「きつい練習の中でも声を出せるチームになってきている」と成長を感じ取っている。ディレーニーHCも「コーチとして頑張って欲しいところでも、頑張ってくれている」と選手を評価する。

 

(写真:「インテンシティは去年とレベルが違う」と手応えを口にする石井GM)

 チーム全体で“現状維持ではD1を戦えない”という意識を持っているようだ。事実、SOコリン・スレイド、CTBマイケル・リトルをはじめとした10人が退団。8月5日時点で、昨季終了後に加入した選手はPR蜂谷元紹(←愛知教員クラブ)、CTBフィシプナ・トゥイアキ(←セコムラガッツ)、PR知念雄(←東芝ブレイブルーパス東京)、LOウォルト・スティーンカンプ(←ブルズ=南アフリカ)、LO中川真生哉(←三重ホンダヒート)、WTB/FB中井健人(←静岡ブルーレヴズ)6人だ。新年度に加わったルーキーたちを合わせれば、人数ではプラスかもしれないが、戦力面では若干の不安が残るのも事実だろう。

 

 石井GMは選手名、ポジションこそ明かさなかったものの、「抜けたポジションの選手を探している」と補強の可能性を示唆した。一方で、「若手を見ていただきたい」と既存の選手の奮起にも期待を寄せる。PR坂本駿介、LO葛見達哉、FL服部航大、SH柴田凌光、SO/CTB福山竜斗らルーキーに、蜂谷を加えた若手6人がニュージーランドに6月から約1カ月半、留学。パートナーシップを結ぶハイランダーズとの関係から実現した武者修行だ。彼らがどれだけレギュラー争いに食い込めるかにも注目だ。

 

(写真:浦和レッズなど同じ三菱重工グループのスポーツチームとも連携を取っていく)

 石井GMは「27年までのD1優勝」を掲げる。それが無謀か否かは、初挑戦のD1でどこまで戦えるかがひとつの試金石となるだろう。細田は「毎試合が勝負だと思っています。“入れ替え戦に行かないように”とは考えず、TOP6を目指す。今季の1年間がダイナボアーズの歴史の中でも勝負の年」と気合い十分だ。トヨタヴェルブリッツから移籍して2季目のSH岩村昂太も「僕たちはチャレンジャー。失うものは何もない。番狂わせを起こしたい」と力強いコメント。ディレーニーHCは「自分たちの道は自分たちでつくる」と“相模原モデル”構築し、上位進出を狙う。

 

(文・写真/杉浦泰介)