(写真:HC就任4季目を迎えるブラックアダーHC ⓒTOSHIBA BRAVE LUPUS TOKYO)

 15日、『JAPAN RUGBY LEAGUE ONE』(リーグワン)の東芝ブレイブルーパス東京が新体制を発表した。リーグワン2季目はトッド・ブラックアダーHCが引き続き指揮を執る。主将も昨季に引き続き、SH小川高廣、FL/No.8徳永祥尭の共同主将体制を継続。オンライン記者会見にはブラックアダーHC、薫田真広GM、荒岡義和社長が出席し、今季の意気込みを語った。

 

「6シーズンぶりのベスト4を残すことができた。ただ昔のブレイブルーパスなら当たり前だった。ようやくスタートラインに立った」
 そう昨季を振り返るのは、荒岡社長だ。前身のトップリーグでは最多タイとなる5度の優勝を収め、日本選手権は6度制覇の名門はここ数年苦しんでいた。2015-16シーズンの準優勝以降、9位、6位、11位、9位(20-21シーズンは不成立)と5シーズンも優勝争いに絡むことすらできなかった。昨季はレギュラーシーズン4位でプレーオフ進出。東京サントリーサンゴリアス、クボタスピアーズ船橋・東京ベイに敗れたものの、名門復活への確かな一歩を刻んだ。

 

(写真:「今季優勝を目指す」と宣言した荒岡社長 ⓒTOSHIBA BRAVE LUPUS TOKYO)

 だが、あくまで視線は13季ぶりの王座奪還に向けられている。BL東京は変革を強調する。昨年、チームは株式会社化。今年からは大手広告代理店の電通に勤め、静岡県ラグビー協会の法人化などを手掛けた星野明宏氏がプロデューサーに就任した。「日本を飛び越えて世界有数のユニークなラグビークラブに変わっていかないとダメ。そのために唯一無二のチームになる」とは荒岡社長。変革により「人気、実力を兼ね備えたチームとして長く君臨していきたい」を目指すという。その高い志については、ブラックアダーHCも「自分にとってはすごくワクワクする材料」と歓迎している。

 

 新たな試みのひとつとしては、記者会見で『猛勇狼士』(もうゆうろうし)というチームスピリットを発表した。「東芝らしさ、東芝のDNAは何なのか。HC、選手と見つめ直した」と薫田GM。“猛”はアグレッシブ、“勇狼”はチーム名のブレイブルーパスに由来し、“士”はサムライや紳士を指すという。薫田GMはチームスピリットを打ち出した意義を、こう説明した。
「選手、チームがグラウンド内外で立ち戻る場所を明確にし、我々の行動、プレーがわかりやすく共感していただくためにチームスピリットを言語化した」

 

 変革の下地となるのは継続路線だ。指揮官はブラックアダーHCが4季目を迎える。チーム主将も小川と徳永の共同体制を続ける。ブラックアダーHCは「昨季、素晴らしい仕事をしてくれた。2人ともチームを第一に考え行動する人間。チームから信頼され、選手としても成長している」と評価。共同主将の利点について、「2人で責任を共有し、FW、BKそれぞれの視点で一貫性を持って強化を進めることできる」と口にした。

 

(写真:OBであり、監督としてチームの黄金期を支えた薫田GM ⓒTOSHIBA BRAVE LUPUS TOKYO)

 昨季リーグ戦13試合出場のPR知念雄、同10試合のLO/FLシオネ・ラベマイ、同8試合のCTBティム・ベイトマン、同6試合のCTB時ジョニー・ファアウリら11人が退団した。新たに加わったのはPR2人(山川力優、タウファ・ラトゥ)で、4月の新入団選手3人(PR木村星南、HO原田衛、CTB児玉樹)を含めればの計5人だ。スコッドは昨季開幕時点の52人から46人とスリム化。これについて薫田GMは「いい選手を育てていく文化は変えない。昨季選手が大きく成長したことで現状の戦力を維持した。トッド(ブラックアダーHC)以下、コーチングのリソースを最大限に活用し、グラウンド内外で強化していきたい」と理由を述べた。

 

 昨季は指揮官がつくり上げたアタッキングラグビーに芽が出て、4強入りを果たした。必然的に他チームからのマークも厳しくなるだろう。今季はその刀に磨きをかけて切れ味を高めていく必要がある。 ブラックアダーHCは言う。
「革新性を打ち出している。自分たちのチームのように過去勝ち切れないチームは、(成功している)他チームの足跡を従うだけというのはよくあること。ただ自分たちがしたいラグビーはそうではない。知的にスマートに判断できる選手をたくさん抱えて進めていきたい。チームが強い信念の下、動いているとプレーを見て分かるようにしたい」


 名門復活への狼煙を上げるBL東京。12月開幕の2季目のリーグワンで大暴れするため、今は静かに爪を研ぐ。

 

(文/杉浦泰介、写真/ⓒTOSHIBA BRAVE LUPUS TOKYO)