エンゼルスの大谷翔平は、ひとまず脇に置いておくとしよう。現時点で日本人最強打者は誰か? 東京ヤクルトの村上宗隆というのが衆目の一致するところだろう。

 

 

<この原稿は2022年8月12日号『週刊漫画ゴラク』に掲載されたものを一部、再構成しました>

 

 さる7月31日の阪神戦(甲子園)から8月2日の中日戦(神宮)にかけて、NPB史上初の5打席連続ホームランを記録した。

 

 ホームランの内訳はレフトへ2本、ライトへ2本、左中間へ1本。イチローが“広角ヒット”なら、村上は“広角ホームラン”である。

 

 9月4日現在、打率3割4分1厘(1位)、51本塁打(1位)、125打点(1位)。22歳での三冠王となれば、29歳での中島治康、落合博満を抜き、NPB史上最年少となる。

 

 今や無双状態の村上に対し、「狭い神宮だから、あれだけ打てるのでは」との声もあるが、「セ・リーグで最もホームランが出にくい」と言われる中日の本拠地バンテリンドームナゴヤでも、7試合で5本のホームランを放っている。

 

 非の打ち所のないバッティングに対し、心配なのがサードの守備だ。今季も既に11失策を記録している。

 

 今キャンプで村上はゴールデングラブ賞受賞を目標のひとつに掲げていたが、そこは難しそうだ。

 

 ちなみに、ここ3年間の同賞受賞者(セのサード)は19年と20年が高橋周平(中日)、21年が岡本和真(巨人)。

 

 サードはスターの宝庫である。その筆頭は長嶋茂雄(巨人)。首位打者6回、ホームラン王2回、打点王5回。V9を4番として支えたことでもわかるように、異次元の勝負強さを誇った。そのミスターは“守備の人”でもあった。2度のダイヤモンドグラブ賞(ゴールデングラブ賞の前身)に輝いている。同賞が設けられたのは72年。もっと早く設けられていたら、賞の常連だったはずだ。

 

 セ・リーグが長嶋なら、パ・リーグは西鉄黄金期の主砲・中西太にとどめを刺す。首位打者2回、ホームラン王5回、打点王3回。引退後は監督を経て、各球団で打撃コーチを務め掛布雅之、若松勉、ラルフ・ブライアントらを育てた。

 

 相撲でいう、あんこ型の体型をしていた中西だが、俊足にして強肩、守備力にも定評があった。体はゴムまりのように柔らかく、守ろうと思えばショートも守れたという話を聞いたことがある。

 

 ホットコーナーと呼ばれるサードの周辺には火の出るような打球が飛んでくる。それを颯爽とさばいてこそプロのサードだ。なぜかミスターは送球の際、掌をチョウのようにヒラヒラさせていた。何をやっても絵になる男だった。

 


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