第102回サッカー天皇杯決勝が16日、神奈川・日産スタジアムで行われた。J2ヴァンフォーレ甲府がJ1サンフレッチェ広島をPK戦の末、制し初優勝を果たした。試合は前半26分に甲府が先制。後半39分に追いつかれ、延長戦後半にPKを与えるピンチもあったがGK河田晃平が止めた。甲府はPK戦を5-4で制し、来季のアジアチャンピオンズリーグ(ACL)出場権を手に入れた。

 

 守護神・河田、延長戦とPK戦で殊勲のセーブ(日産スタジアム)
ヴァンフォーレ甲府 1-1 サンフレッチェ広島
        (PK5-4)
【得点】
[甲] 三平和司(26分)
[広] 川村拓夢(84分)

 

 甲府が劇的勝利で優勝杯を天に掲げた。北海道コンサドーレ札幌、鳥栖、アビスパ福岡、鹿島アントラーズとJ1勢を次々と撃破し、決勝へとコマを進めたものの、J2では現在18位と下位に苦しんでいる。対戦する広島は今季J1で3位に付けており、ルヴァンカップでも決勝に進出している。

 

 甲府初の天皇杯決勝。国立競技場という舞台で、物語の主役となったのはベテラン選手たちだ。まずは34歳のFW三平和司。湘南ベルマーレ、大分トリニータ、京都サンガF.C.と渡り歩いてきて、甲府加入は2年目である。26分、左CKからの崩しでMF荒木翔が抜け出し、クロス。それを三平が左足で合わせた。

 

 先制点を奪った後、甲府は人数をかけて守備ブロックを敷き、逃げ切りを図った。だが後半39分、広島に追いつかれた。MF川村拓夢に強烈なシュートを叩き込まれたのだ。1-1のまま延長戦に突入。前半2分に満田のFKがクロスバーを叩き、甲府はヒヤリとしたが、その後はスコアを許さなかった。

 

 後半7分、甲府在籍20年目の42歳DF・山本英臣がピッチへ。しかし4分後、山本はペナルティーエリア内でMF満田誠の浮き球のパスを手に当ててしまい、ホイッスルが吹かれた。この絶体絶命のピンチを救ったのが35歳の河田だ。「このまま終わらせるわけにはいかない」。ゴール右隅に飛んだグラウンダーのシュートを右手一本で弾き出した。

 

 殊勲の河田はさらにPK戦でも魅せた。広島の先攻で両チーム3人ずつが成功。河田は3-3で迎えた広島の4人目・川村のシュートをゴール左に飛んでセーブし、勝利をグッと手繰り寄せた。甲府の4人目、広島の5人目が成功し、4-4となった場面で甲府5人目のキッカーは山本。ゴール左上をつく絶妙なコースに蹴り込み、劇的な試合に終止符を打った。

 

 山本、河田を中心に歓喜の輪ができあがる。「この小さなクラブは、みんなが小さな責任を持って支え合っているチーム。ここで勝ってみんなで喜べることがうれしいです」と吉田達磨監督。キャプテンの荒木はこう胸を張った。
「これから先、どんなことがあってもヴァンフォーレ甲府は選手だけじゃなくて、ファン、サポーターの皆さんとひとつになって戦う。それが僕たちの歩んでいく道」

 

 甲府にはNOメガホンというチャントがある。<俺らはここにいる。君は一人じゃない>。チームがJ2に落ちた時もこの歌詞をサポーターは歌い続けた。J1勢を連破し、地方クラブが成し遂げた快挙。凱歌を上げ、甲斐の国へと天皇杯を持ち帰る。

 

(文/杉浦泰介)