カタールワールドカップ(11月20日開幕)に臨む日本代表26人のメンバーが発表された。ヴィッセル神戸で調子を上げてきた大迫勇也の落選は、筆者も予想していなかった。

 

 ボールキープに長け、素早いターン、テクニックもある。ストライカーとチャンスメーカーを兼ね、周囲を活かしながら攻撃に厚みをもたらす存在はほかにいないだけに「外せない一人」と考えていたからだ。今年はケガに苦しめられて代表活動からも離れていたとはいえ、コンディション面で外れたとは思えない。本大会で想定する戦術面と照らし合わせたうえでの森保一監督の判断だったのだろう。

 

 同じグループに入った欧州列強のスペイン、ドイツと同組に入ったことで、相手にボールを持たれて守備に回る時間がどうしても長くなるのは明らか。貴重なテストの機会となったのが、9月のドイツ遠征であった。アメリカ戦では前田大然を1トップに置き、前線からの連動したプレスがハマった。ボールを丁寧につなごうとする相手にストレスを与え続けていくつもミスも誘っている。コンパクトな陣形を維持し、味方との距離を近づけてボールを奪い取り、カウンターに転じるというチームの意図は読み取れた。森保監督としてはスペイン、ドイツ相手にどう戦っていけばいいかがはっきり見えたのではあるまいか。

 

 おそらく1トップの序列的にそう高くはなかったはずの前田だが、前後にあれだけ激しく追えて、周囲との呼吸を合わせてボールを刈り取れる力を見せつけたことで評価は爆上がりしたに違いない。この試合ではシュートを1本も打てていないが、スペースに走り込む動きで味方のシュートにつなげていた。ゆえにマイナス評価とはならなかったと踏む。

 

 爆発的なスピードと守備時の献身性という特徴は程度の差こそあれど、メンバーに選ばれた浅野拓磨にも共通する。ただ守備の強度、連続性、現在のコンディションを考えると前田が一歩リードしていると見ていいだろう。チームの大黒柱となる絶好調の鎌田大地とのプレーの相性も良さそうだ。

 

 1トップ候補のもう一人、上田綺世はまた違うタイプ。パンチ力のあるシュートが売りで、先のドイツ遠征ではボールを収める働きやフィジカルの強さを発揮して前田に負けず評価を上げた。大迫の評価が落ちたということではなく、上田に対する期待感が上回ったという判断なのだと思う。

 

 第2戦のコスタリカ戦は、逆にボールを長く持つ展開が予想されるだけに上田の先発もある。グループリーグ突破のためには、堅守を持ち味とする難敵から勝ち点3を奪わなければならない。得点感覚に長けた若きストライカーがキーマンの一人になると言っていい。今夏のE―1選手権でMVP&得点王に輝いた相馬勇紀が選ばれたのも、攻め手を増やすという意図を感じる。セットプレーのキッカーを務められるという面も加味されたのではないだろうか。

 

 もう一人“サプライズ落選”となったのが、森保ジャパンでも常連メンバーであった原口元気である。中央でもサイドでもプレーできるユーティリティー性は重宝されてきた。ドイツ遠征で用いた4-2-3-1に当てはめれば、左右のサイドハーフ、トップ下、ボランチ、または3バックに移行した際のウイングバックがポジションとしては考えられるが、遠藤航、守田英正が主軸となるボランチを指揮官は想定していたのではないかと思う。ただ、森保ジャパンのボランチに足りない要素として「高さ」があり、前回のロシア大会におけるベルギー戦のように空中戦を仕掛けられると劣勢を強いられてしまうウィークポイントが解消されていない。今回、センターバックの人数が多かったのは3バックを見据えてということもあるだろうが、特に谷口彰悟、板倉滉あたりは“空中戦強化”としてボランチに置くプランもあるに違いない。そのため原口が弾き出された格好になったのではないだろうか。

 

 いずれにしてもシミュレーションを何度も重ねたうえで選ばれた26人であることは言うまでもない。超難関のグループであることに加え、中3日で戦っていかなければならない。5人交代制の採用というのもミソだ。26人全員の有効活用なくして、グループリーグ突破の道はない。


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