四国アイランドリーグに次ぐ、国内2番目のプロ野球独立リーグが4月28日に開幕。新潟、長野、富山、石川の4県で構成された「北信越ベースボール・チャレンジ・リーグ」(北信越BCリーグ)だ。
 リーグの発進には、多くの難問が立ちはだかった。誰もが「こんな雪国に本当にプロ野球ができるのか」と疑いの目をもった。だが、「工夫すれば、必ず成功する」と訴え続け、球団設立やスポンサー探しに奔走した男がいた。リーグの運営会社「株式会社ジャパン・ベースボール・マーケティング」代表取締役・村山哲二氏である。
 その村山氏に北信越BCリーグ成功のカギを聞いた。

※3月に終了した「週刊シミズオクトスポーツ」にて06年8月〜07年3月、不定期連載でお届けした「キーマンの告白 〜陰の立役者たち〜」の再録です。
 1年前、誰もがリーグ設立に疑心暗鬼だった

 僕は、昨年3月まで新潟の広告代理店に勤務し、そこで9年間、Jリーグアルビレックス新潟の広告担当としてチームのプロモーションに携わってきました。
 でも、実は僕は根っからの野球好き。自分自身も大学まで野球をやっていました。だから、アルビレックス新潟のPR活動を行ないながら、「野球でも新潟を盛り上げられたら」とずっと思っていたのです。それが縁あって、北信越BCリーグ設立を手がけることとなり、非常に嬉しく思っています。

 とはいえ、不安がなかったわけではありません。球団設立やスポンサー探しのために、実にさまざまな人に会い、話をしました。でも、「こんな雪国に野球は根付かないよ」「お客さんが集まらないんじゃない?」と、最初は否定的な意見ばかりで、誰も本気にしてくれませんでした。
 それでも、一生懸命に独立リーグの必要性や運営体制などを一つ一つ説明し、説得を続けていくうちに、ポツポツと「よし、やってやろうじゃないか」という人が出てきてくれたのです。

 しかし、初年度の今年、球団経営は限られた資金の中でやり繰りしていかなければならず、贅沢なことは一切できません。運営費を抑えるため、全試合、日帰りでバスでの移動にするなど、精一杯切り詰めながらやっていかざるを得ません。しかし、5年後には今の4、5倍の売り上げが出せればと思っています。
 これは不可能ではありません。なぜなら、アルビレックス新潟(Jリーグ)は新潟市内(約80万人)の経済活動のみで30億円という売り上げを生み出すことができました。ですから、これは不可能な数字ではないのです。

 こうした安定した財源を確保するために一番大事なことは“集客力”です。これこそが、リーグ成功のカギを握っていると言っても過言ではありません。地域の方たちがどれだけ“おらがチーム”として受け入れてくれるか、スタジアムに来て応援したいと思ってくれるか。この動機付けに僕たちは注力していかなければならないのです。

 さて、「北信越なんかに独立リーグをつくって、お客さんは集まるの?」と疑問に思われる方もたくさんいらっしゃることでしょう。Jリーグやbjリーグを見てもわかるように、これはやり方次第。北信越BCリーグでも、さまざまな工夫を凝らしています。

 おらが地元に祭りがやってくる!

 例えば、試合の組み合わせです。北信越BCリーグでは、原則同じ会場での連戦は行ないません。開幕日の28日には新潟会場で新潟と富山の試合が行なわれますが、翌日は石川会場で石川と新潟、翌々日には長野会場で信濃と新潟の試合が行なわれます。例え、同じカードの連戦があったとしても、ホームとビジターを入れ替えます。そして、どのチームも基本的にはホーム、アウエー、ホーム、アウエー……というふうにしていきます。

 そうすると、一つの会場に北信越BCリーグの試合が月に1、2度くらいのペースで回ってくることになります。そこで、地元の人たちに “祭り”を開催してもらうのです。祭りは時々だからこそ、嬉しいもの。連戦にしない理由がそこにあります。
会場では各地域の後援会を中心に、地元ならではの食材やグッズを会場で販売するなどして、ビジター側の観客をもてなしたり、試合途中には地元の中学や高校のブラスバンド部、チアリーディング部の子たちによる応援合戦が繰り広げられたり……。こんなふうにして、北信越BCリーグの試合を自分たち主催の祭りにして、地元の人たちが楽しんでくれればと思っています。

 また、四国アイランドリーグとも、さまざまなイベントを開催していきます。今年は夏にはオールスターを、10月にはチャンピオンマッチを開催する予定です。お互いに刺激し合いながら、独立リーグを盛り上げていきたいと考えています。

 北信越BCリーグの開幕は4月28日。この日は新潟と長野で行なわれ、「新潟アルビレックスvs.富山サンダーバーズ」(新潟:三条市民球場)、「信濃グランセローズvs.石川ミリオンスターズ」(長野:会場は未定)という組み合わせです。きっとどちらの会場でも観客で溢れ返る光景が見られることでしょう。僕も今から非常に楽しみにしています。


村山哲二(むらやま・てつじ)プロフィール
1964年生まれ。新潟県立柏崎高校では野球部に所属。同校卒業後、駒澤大学北海道教養部
に進学し、準硬式野球部主将としてチームを全国大会に導いた。2006年3月まで新潟の広告代理店に勤め、アルビレックス新潟(Jリーグ)の発足時から運営プロモーションに携わった。同年7月に株式会社ジャパン・ベースボール・マーケティングを設立し、代表に就任。アルビレックス新潟の運営方法を活用し、北信越BCリーグの成功を狙う。