(写真:開幕戦で対戦する埼玉WKとBL東京。リーチ<右>はNo.8で先発出場)

 2季目を迎えたリーグワン。17日、ディビジョン1・2・3が一斉に開幕する。昨季D1王者の埼玉パナソニック ワイルドナイツ(埼玉WK)は同4位の東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)とホストスタジアムの熊谷ラグビー場で対戦。昇格組の花園近鉄ライナーズは(花園L)、NECグリーンロケッツ東葛(GR東葛)と18日に千葉・柏の葉公演総合競技場で、三菱重工相模原ダイナボアーズ(相模原DB)はリコーブラックラムズ東京(BR東京)と17日に東京・秩父宮ラグビー場で戦う。

 

 連覇がかかる埼玉WKは今季も優勝候補の筆頭だ。堅守を誇る野武士軍団は昨季、レギュラーシーズンの平均失点(不戦敗の試合は除く)18.3、反則数(同)9.57はD1最少。今季はヒーナン・ダニエル、ジョージ・クルーズの両LO、CTBハドレー・パークスなどリーグワン初代王者に貢献した選手が去ったものの、CTBダミアン・デアレンデ(68キャップ)、LOルード・デヤハー(65キャップ)といった現役南アフリカ代表(スプリングボクス)を獲得。PR稲垣啓太、HO坂手淳史、堀江翔太、LOジャック・コーネルセン、SO松田力也、山沢拓也、CTBディラン・ライリー、オーストラリア代表(ワラビーズ)のWTBマリカ・コロインベテら各ポジションに代表クラスを揃える分厚い戦力は健在である。

 

 16日、開幕戦前日記者会見でロビー・ディーンズ監督は「昨季は第1節、2節で(コロナ感染者が出たため中止)試合をできず悔しい思いをした。明日の試合を心待ちにしている」と語った。対戦相手のBL東京については「伝統的にフィジカルでタフなチーム。トッド(・ブラックアダーHCは)常に熱い気持ちで戦うチームをつくってくる。相手の激しさに照準を合わせている。明日も必ずタフな試合になる」と警戒を寄せる。

 

 堅守を誇る埼玉WKに対し、BL東京はアタッキングラグビーで突破できるか。おそらく今季のリーグ戦を占う戦いとなろう。「大事なのはセットピースのバトル。パナソニックはラインアウト、スクラム、ブレイクダウンが素晴らしい。エクスキューション(実行力)が強みで、こちらがそれをできないと痛い目に遭う」とブラックアダーHC。ワーナー・ディアンズ、ジェイコブ・ピアスの両LO、No.8リーチ・マイケルらを中心に高さとパワーで対抗したい。昨季実質無敗のチームに黒星をつけられれば、波に乗れることは間違いない。

 

(写真:東京SGの齋藤<左>は今季から堀越康介と共同キャプテンを務める)

 埼玉WKの対抗馬と目される昨季準優勝の東京サントリーサンゴリアス(東京SG)は本拠地・味の素スタジアムでクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S船橋・東京ベイ)を迎える。ニュージーランド代表(オールブラックス)40キャップで昨季得点王に輝いたSO/FBダミアン・マッケンジーは退団したが、コベルコ神戸スティーラーズ(神戸S)からオールブラックス50キャップのSOアーロン・クルーデンを獲得。フランスTOP14のASMクレルモン・オーヴェルニュからFB松島幸太朗が復帰した。近年飛躍が目立つS船橋・東京ベイ相手にどんな戦いを見せるか。こちらも注目の一戦だ。

 

 そのほか今季に加入した世界的スターのプレーにも耳目が集まる。D1だけでも埼玉WKのスプリングボクスコンビのほか、横浜キヤノンイーグルスに同じく現役バリバリのスプリングボクスで日本にもお馴染みのSHファフ・デクラーク、トヨタヴェルブリッツ(トヨタV)にはイングランド代表70キャップのLOジョー・ローンチブリーというビッグネームが加わった。今季もリーグワンでプレーする東京SGのCTBサム・ケレビ(ワラビーズ41キャップ)、S船橋・東京ベイのHOマルコム・マークス(スプリングボクス57キャップ)、SOバーナード・フォーリー(ワラビーズ75キャップ)、トヨタVのFLピーター・ストフ・デュトイ(スプリングボクス66キャップ)、花園LのSHウィル・ゲニア(ワラビーズ110キャップ)、SOクウェイド・クーパー(同76キャップ)らと共にリーグを熱狂させる存在となるはずだ。

 

(写真:トヨタVの古川はトヨタの車、静岡BRの奥村はヤマハのバイクに合わせたポーズ)

 今季のリーグワンは、D1の12チーム中7チームで新キャプテン(共同主将も含む)。そのうちチーム在籍2季目(移籍を含む)の選手は4人。静岡ブルーレヴズ(静岡BR)のFB奥村翔(おくむら・かける)とスプリングボクス29キャップのFLクワッガ・スミスが共同主将を務める。24歳の奥村は昨季リーグ戦全試合(不戦勝・不戦敗は除く)に出場。セットプレーのキッカーを務めるなど中心選手として活躍した。

 

 2季目でのキャプテン就任については。「やりがいしか感じていないです。昨季試合に出させてもらって、感じたこともありますし、このチームを優勝に導きたいと思っています」と意気込む。静岡BRはセットプレーを武器としたFWが売りのチームだが、昨季からボールを動かすスタイルにも取り組んでいる。スーパーラグビーの強豪クルセイダーズから来たSHブリン・ホール(ニュージーランド)、SOサム・グリーン(オーストラリア)、WTBマロ・ツイタマ(サモア)らと共に最後尾に位置する奥村がアタックを牽引する。

 

 D2からの昇格組、相模原DBは象徴的存在だったCTBマイケル・リトル(現スティーラーズ)や司令塔のSOコリン・スレイド(引退)が抜けた。代わりにワラビーズで2度のW杯に出場したSO/CTBマット・トゥームアらが加わり、メンバーは一新した。HCも昨季ディフェンス面を担当したグレン・ディレーニーACが就任。新キャプテンにはトヨタVから移籍加入2季目のSH岩村昂大が任された。大きく変わったチームをまとめる難しさについて聞くと、こう答えが返ってきた。
「多少はありますけど、僕以外にもリーダーズ、信頼できるスタッフがいる。みんなの力を借りながらできれば、自ずとひとつにまとまってくるのかなと思っています」

 

(写真:岩村<右>がキャプテンを務める相模原DBは開幕戦でBR東京と対戦)

 今季は7月18日から新体制が始動。例年以上にハードなトレーニングを積んできた。「フィジカル、フィットネスは昨季より向上している。実際にプレシーズンの試合でもそういう場面が見られています」と岩村。昇格組として緑の旋風を起こすのか。新キャプテンは「大口叩く方が面白いと思いますが、まずは自分たちのやるべきことをグラウンドで表現する。1個1個やっていきたい」と語った。

 

 来年はW杯フランス大会を控えるだけに、ジャパン候補生たちのプレーにも注目だ。リーグでハイレベルな争いをすることが日本ラグビーの強化にもつながるはず。また協会主導から各チーム主導に変わったホストゲームの運営にも注目である。どれだけ観客を呼び込み、ファンを増やせるのか。2季目の進化に期待したい。

 

(文・写真/杉浦泰介)