(写真:7カ月ぶりの公式戦で1T2Gを挙げた松田<中央>)

 17日、「NTTジャパンラグビー リーグワン2022-2023」が開幕し、昨季王者の埼玉パナソニック ワイルドナイツ(埼玉WK)が同4位の東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)を22-19で下した。

 

 昨季の王者を開幕戦で出迎えたのは曇天の空模様だった。この日の熊谷市の最高気温は7度。“日本一暑いまち”として知られるが、冬の寒さがスタジアムを包んだ。1万人を超える観客の前で、フィジカルバトルには自信を持つ両軍が熱戦を繰り広げた。

 

 先に流れを掴んだのは“接点無双”を掲げるBL東京だ。ブレイクダウンから激しいプレッシャーをかけた。ラインアウトモールから埼玉WKのペナルティーを誘い、それで得たPGをSOトム・テイラーが決めた。11分には敵陣でフェイズを重ね、No.8リーチ・マイケルがインゴール右に飛び込んだ。テイラーがコンバージョンキックを決め、10-0とBL東京がリード。16分にPGで加点し、13点差を付けた。

 

(写真:小山のパスから抜け出した布巻。攻守に貢献した)

 対する埼玉WKも徐々にリズムを取り戻していく。SH小山大輝がパスダミーで抜け出し、FL布巻峻介のトライをアシスト。SO松田力也のコンバージョンキックも決まり、7-13と詰め寄った。27分にPGで9点差とされたが、埼玉WKの修正力が光った。

 

 28分、テンポの速いアタックでBL東京のペナルティーを誘った。PGは外れたものの、試合の流れは埼玉WKに傾き始めていたように映った。31分、CTBディラン・ライリーがバランスを崩しながらもフリーの布巻にパス。布巻がキャッチし切れず、ノックオンとなったが、攻撃が継続されていればトライチャンスだった。

 

(写真:タックルを受けながらインゴールにねじ込んだ坂手のトライ)

 35分、LOジェイコブ・ピアスがシンビン(10分間の一時退場)で1人欠けたBL東京にスクラム勝負を挑んだ。敵陣でのプレーを続ける。CTBダミアン・デアレンデ、LOエセイ・ハアンガナが身体をぶつけ前進。最後は40分、小山のパスを大外で受けたHO坂手淳史がFB松永拓朗のタックルを浴びながらインゴール左隅に飛び込んだ。埼玉WKは前半を12-16でビハインドで終えた。

 

 前半の終盤は修正したものの反則数は8個と、昨季リーグ戦(不戦敗を除く)1試合平均9.6個を考えれば、規律の面で苦しんだ。だが逆転勝ちが多いのも特長だ。昨季はリーグ戦5試合で前半リードを許しながらひっくり返した。後半の切り札として起用されたHO堀江翔太が昨季MVP獲得したことも後半の強みの証明だろう。

 

(写真:プレースキック、タッチキックでミスもあり「精度を上げていかない」と反省した松田)

 後半12分、ロビー・ディーンズ監督は堀江とPRクレイグ・ミラーを投入。すると3分後に試合をひっくり返す。松田が魅せた。小山、ライリーとつないだボールをハーフウェイライン付近で受けると、「自分の前が空いた」とディフェンスのギャップを突き、すり抜けた。このままインゴール右に滑り込み、自らコンバージョンキックを決めた。19-16と、この試合初めて埼玉WKがリードを奪った。

 

 20分にPGで追いつかれたものの、ペナルティーやミスを重ねたのは埼玉WKではなくBL東京だった。
28分、松田に代わって入った山沢拓也がジャッカルでBL東京がノットリリース・ザ・ボールの反則。31分、相手のインテンショナルノックオンで得たPGを山沢が確実にゴールを射抜いて3点を勝ち越した。

 

(写真:後半はPGの3点のみに抑えた埼玉WKの堅守)

 32分には堀江がBL東京のパスが乱れたところを見逃さない。テイラーを捕らえると「下に落とすとペナルティーになる可能性もあったので、上に抱えた」と咄嗟に判断。ミラー、FL大西樹がまとわり付きボールを出させない。相手のペナルティーを誘い、ボールを奪取した。

 

 それでも1トライでひっくり返せる得点差ではあったが、BL東京は難攻不落の埼玉WKの牙城を崩せなかった。38分にCTBセタ・タマニバルがスローフォワード。40分にはWTBジョネ・ナイカブラがランから前に蹴り出そうとして失敗した。どちらも焦りが生んだミスと言えよう。

 

 このままノーサイド。昨季王者が前半苦しみながらも見事に修正し、勝ち切った。接戦をモノにできる勝負強さが公式戦で2019年以来負けていない埼玉WKの真骨頂だ。「昨季もこういう試合が多かったので、想定内」と堀江。キャプテンの坂手は「チームとして勝てたことが大きい。1試合1試合成長していきたい」と語った。

 

(文・写真/杉浦泰介)