(写真:今季のチーム初トライを挙げた根塚。進化を感じさせる活躍だった)

 18日、「NTTジャパンラグビー リーグワン2022-2023」開幕節最終日が各地で行われた。東京・味の素スタジアムでは昨季3位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S船橋・東京ベイ)が同準優勝の東京サントリーサンゴリアス(東京SG)を31-18で破った。S船橋・東京ベイの東京SG戦勝利はトップリーグ時代の04-05シーズン以来、18季ぶり。敗れた東京SGはホストゲーム開幕戦を白星で飾れなかった。


 優勝候補同士の対決となった開幕戦。味の素スタジアムには1万人を超える観客が集まった。ホストチームの東京SGは先着1万3000人に黄色のベースボールジャージをプレゼントする企画を実施。スタジアムを黄色く染めようとしたが、“オレンジアーミー”(S船橋・東京ベイのファンを含めたチームの総称)も負けじと駆け付けた。

 

 一昨季はベスト4、昨季は3位と着実にステップアップを遂げているS船橋・東京ベイ。フラン・ルディケHC体制も7季目となり、成熟度は上がってきた。昨季の主力の多くが残留。この日も南アフリカ代表57キャップのHOマルコム・マークス、オーストラリア代表75キャップのSOバーナード・フォーリー、ジャパン56キャップのキャプテンCTB立川理道らが先発した。

 

 本拠地で迎え撃つ東京SGはオーストラリア代表41キャップのCTBサム・ケレビ、同27キャップのNo.8ショーン・マクマーン、ニュージーランド代表50キャップのSOアーロン・クルーデンを欠いたが、それでも2季ぶりの日本復帰となったFB松島幸太郎、ジャパンの主力に成長しているSH齋藤直人、No.8テビタ・タタフ、一昨季のトップリーグトライ王WTBテビタ・リーと人材豊富だ。リザーブにはジャパンのSH流大、CTB中村亮土らが控えている。

 

 キックオフからリズムを掴んだのはS船橋・東京ベイ。出足の速いディフェンスでボールを奪った。20分間で東京SGは5個のペナルティー。S船橋・東京ベイはラインアウトモールを得意とするが、ショットを3度選択し、2本のPGを決めた。「ここ数年はいつも追いかけていた。常に優位に立っておきたい。バーナードが狙える位置ではキックを選択した」とキャプテンの立川。6点をリードし、試合を優位に進める。

 

 21分にはマイボールスクラムから攻撃を重ね、最後はFBゲラード・ファンデンヒーファーの飛ばしパスを大外でキャッチしたWTB根塚洸雅が対面のリーのタックルを受けながらインゴール右隅に飛び込んだ。タッチラインを踏んでいれば、トライ無効となるところだったが、ギリギリ足が残っていた。「“あそこで取り切れるWTBになりたい”と思っていたので思い切り勝負した」。昨季はベストフィフティーン、ベストラインブレイカー、新人賞と大ブレイクしたが、“WTB2年目”で更なる飛躍を目指す。

 

 25分と35分にPGで返されたものの、その間にフォーリーがPGを決め、14-6で前半を終えた。後半でも先手を取ったのはS船橋・東京ベイだ。素早いパス回しからラブスカフニのパスを受けたWTB木田晴斗がインゴール左隅へトライ。フォーリーのコンバージョンキックも決まり、21-6とリードを広げた。

 

 9分にはディフェンスラインのギャップを突いたタタフにトライを奪われたが、主導権を譲らない。激しいディフェンスやパワフルなスクラムで相手のペナルティーを誘う。18分は相手ボールのスクラムで押し込み、東京SGはコラプシングの反則を犯した。それで得たPGをフォーリーが決め、24-13とした。

 

 正確なプレースキックでチームに貢献した背番号10はパスでも魅せる。24分、敵陣でボールを持つと、左サイドの無人のスペースへ蹴り込んだ。弾んだボールを掴んだのは大外の木田。そのままインゴール左隅に滑り込み、この日2トライ目を挙げた。フォーリーはコンバージョンキックを成功し、残り15分で18点差と勝利をグッと手繰り寄せた。

 

 36分にトライを取られたものの、31-18でノーサイド。S船橋・東京ベイが開幕戦を白星で飾った。BK陣の3トライでの快勝した。積極的な姿勢でアタックをリードしたSH藤原忍は「FWが頑張ってくれたからこそ自分の持ち味を出せた」と感謝。それはプレーヤー・オブ・ザ・マッチに攻守に身体を張ったFL末永健雄が選ばれたことからもわかるようにFWの貢献を抜きに東京SG戦18季ぶりの白星は語れない。

 

 ルディケHCは「タフな試合だったがみんなハードワークをしてくれた。シーズンに向けていいスタートを切れた」と総括。立川は「勝ててハッピーだが、ここがスタート。今日の課題を修正して次の試合に臨みたい」と前を向いた。

 

(文・写真/杉浦泰介)