良くも悪くも、これが日本流か。

 

 

<この原稿は2022年12月16日号『週刊漫画ゴラク』に掲載されたものです>

 

 いかなる理由があろうとも、ルールを守るという規範意識は、他国の人々には見られないものだ。これは誇っていい。

 

 一方でそのルールに守るべき価値があるかどうかについては、深く考えようとしない。

「日本人は車が来ないとわかっていても、赤信号だと道路を渡ろうとしない。なぜ?」

 

 こう言って首をかしげていたのが元サッカー日本代表監督のフィリップ・トルシエである。フランス人の目には、車が来ないにもかかわらず、辛抱強く信号の色が変わるのを待ち続ける日本人の姿が奇異に映ったようだ。

 

 さて、ここからが本題だ。

 

 来年の3月に開業する北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールド北海道」(北広島市)のファウルゾーンのサイズが、公認野球規則の基準を満たしていないとして、2023年シーズン終了後に改修されることになった。

 

 いったい、何が問題だったのか。日本の野球規則では、本塁からバックストップ(バックネット側のフェンス)までの距離が「60フィート(約18メートル)以上」と定められている。ところが計測すると、実際には15メートルほどしかなかったというのである。

 

 では、野球の本場・米国の野球規則はどうか。こちらは「60フィート以上が推奨される(Recommended)」と記されている。すなわち60フィートは、あくまでも目安であって、それに縛られる必要はない、と解釈するのが自然だろう。実際、メジャーリーグでは30の本拠地のうち「60フィート以上」を充たしているのは、たった2つしかない、という。要するに有名無実と化しているのだ。

 

 エスコンフィールドを設計したのは、レンジャーズが本拠地とするグローブライフ・フィールドなどを手がけたテキサス州のHKS社。同球場の本塁からバックストップまでの距離は42フィート(約13メートル)しかない。

 

 ファウルゾーンは狭ければ狭いほど臨場感が増す。ファンと選手との一体感も高まる。ワクワク感、ドキドキ感が詰まっていてこそボールパーク(球場)なのだ。

 

 今回の問題も、その文脈で語られるべきだろう。1シーズン使用してみて選手、ファンから感想を聞き、その時点で改修するか否かを決めても遅くはないのではないか。野球規則を改正するという手もある。設計会社に任せっきりで確認を怠った球団にも非はあるが、「3メートル足りない」と、鬼の首を取ったように球団を吊るし上げるのも、少々大人げない気がする。

 


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