サッカー日本代表は森保一監督の続投が決まり、カナダ、メキシコ、アメリカ3カ国共催の次回ワールドカップ(2026年6月開幕予定)に向けて今年3月のフレンドリーマッチから〝リスタート〟を切ることになる。3年半後となれば三笘薫、鎌田大地、堂安律、冨安健洋、久保建英、板倉滉、田中碧らは脂が乗ってくるであろう20代中盤から後半で本大会を迎えることになり、プレーヤーとしてのスケールアップが期待される。パリオリンピック世代を含め、若い選手たちも当然メンバーには入ってくるだろうし、陣容がガラリと変わってくる可能性は十分に考えられる。

 

 個人的に楽しみにしているのが、2022年JリーグMVPの岩田智輝である。横浜F・マリノスの3年ぶりのリーグ制覇に大きく貢献した25歳。センターバックとボランチで併用され、ローテーションしながら戦うチームのなかで2715分のプレータイムはフィールドプレーヤーで最長だった。球際の競り合いに強く、フィジカル能力に長けたプレーのみならず、ポジショニングや読み、駆け引きに優れていて高いインテリジェンスを感じるユーティリティープレーヤーだ。守備に迫力と安定をもたらすばかりでなく、攻撃の起点となる彼の存在はアタッキングフットボールに欠かせなかった。大きく飛躍するシーズンとなった。

 

 その岩田がF・マリノス時代に指導を受けたアンジェ・ポステコグルー監督が指揮するスコットランド1部の名門セルティックに移籍(買い取りオプションのある期限付き)することが12月30日に正式発表された。同じ1997年生まれの前田大然、旗手怜央ら日本人選手の存在、そして慣れ親しんだスタイルとあってアジャストにそう時間は掛からないだろう。活躍していけば3月の日本代表戦に招集ということも考えられる。

 

 岩田自身、日本代表への思い入れは強い。

 

 A代表デビューを果たしたのが、大分トリニータ時代の2019年6月にブラジルで開催されたコパ・アメリカ(南米選手権)でのグループステージ第2戦のウルグアイ代表戦。U―22代表メンバーを中心に編成されたチームにおいて、右サイドバックで先発起用された。

 

 ベストメンバーをそろえたウルグアイに対して2―2と善戦したゲーム。だが岩田は、エディンソン・カバーニとルイス・スアレスの2トップに、マックスと言っていいほどの衝撃を受けた。

 

 以前彼にインタビューした際、このように語っていた。

「カバーニ選手はシュートレンジが広い。日本だと(ゴールまで)距離があったら、入る確率が低くなるからラッキーだなと思えるけど、軽く打ってバーに当てて……。これはヤバい、しっかり寄せないとダメだって思いました。それとスアレス選手はボールがないときの動きが凄くて、それでいてボールを受けたときの反応も素早い。これがトップ(・オブ・)トップの選手なんだなって。

 そのときは世界を経験できて良かったなと思ったんですけど、そこで何もできなかったのが悔しさとして残っています。この舞台で自分の良さを出せなかった後悔。(目標とする)海外挑戦も、周りができているなかで僕はできていない。チャンスをものにできなかった部分もあると思うんです」

 

 続く第3戦のエクアドル代表戦にも先発したものの、クロスの対応で失点に絡んでしまう。コパ・アメリカでの悔しさが欧州挑戦への意識をより強めていったのは間違いない。F・マリノスに移籍したのも、欧州に近づくステップアップとして捉えていた。

 

 岩田の最大の強みはそのポリバレント性だ。

「いろんなポジションをやっているから(周りの考えが)分かるところがあります。ひとつひとつのパス、ポジショニング、顔出しのタイミング……常に味方のことを考えて動くようにしていて、こだわりと言えばこだわりです」

 

 周りがどうプレーしたいかを感じながら、自分のプレーに落とし込める。セルティックでも、そして日本代表でも重宝されるに違いない。

 

 2023年、ブレイク候補の一人にJリーグMVPという箔をつけて海を渡る岩田智輝を推したいと思う。


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