帝京大、 ”TEIKYO GANZ”で11トライ挙げ2年連続11度目のV ~全国大学選手権~

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 8日、第59回全国大学ラグビーフットボール選手権大会決勝が東京・国立競技場で行われ、帝京大学(関東大学対抗戦グループA1位)が早稲田大学(同3位)を73-20で破り、2年連続11度目の優勝を果たした。

 

 秋の対抗戦がスタートしてから負けなしで駆け抜けた。対抗戦は立教大学(88-0)、青山学院大学(52-0)、筑波大学(45-20)、日本体育大学(129-6)、早大(49-17)、明治大学(29-13)、慶應義塾大学(57-14)と7連勝。大学選手権に入ってからも、準々決勝の同志社大学(50-0)、準決勝の筑波大(71-5)と危なげなかった。連覇に向けて死角はほぼ見当たらなかった。

 

 快晴の空が選手たちを迎えた大学選手権決勝。スタジアムに「TEIKYO GANZ!」の声が響き渡った。スクラム組む前にFWの誰かが叫ぶ。これは対抗戦でも見られた場面だ。主にコールを発していたFL奥井章仁(3年)によれば、「GANZ」はドイツ語で「全て」「完全な」を意味し、「全て押す。塊となって、ひとつも崩れず押そうと。昨季からFWで考え、ここぞの場面でコールしています。今日は1年の集大成なので、全ての場面で言っていたと思います」という。序盤は早大のスクラムに苦戦する場面もあったが、途中からは“完全な”スクラムで相手を圧倒した。

 

 キックオフ直後にスコアしたのは帝京大だ。フェーズを重ねて敵陣でプレー。FL青木恵斗(2年)のオフロードパスを受け取ったSO高本幹也(4年)が「スペースが見えた」とスルリと抜け出し、インゴールに飛び込んだ。ノーホイッスルトライで先制すると、高本幹也自らコンバージョンキックを決めて7点のリードを奪った。

 

 しかし早大も反撃を見せた。11分にスクラムから左に展開していき、SO伊藤大祐(3年)が内に返すパスでWTB槇瑛人(4年)が抜け出してトライ。CTB吉村紘(4年)のコンバージョンキックが決まり、追いついた。17分には右のラインアウトから左へ展開し、伊藤が大外のWTB松下怜央(4年)へ繋ぐ。松下はインゴール左隅に飛び込んだ。いずれもセットプレーが起点となっての得点。「分析して準備したプレー」(早大・大田尾竜彦監督)でスコアに繋げた。

 

 深紅の王者は逆転されても慌てなかった。HO江良颯(3年)らFW陣を中心に前進し、フェーズを重ねる。22分、青木がポスト下にトライ。高本幹也のコンバージョンキックが決まり、リードを奪い返した。以降はスクラムでも優位に立つ。スクラムでペナルティーを獲得。27分、ラインアウトを起点にNo.8延原秀飛(3年)がトライ。終了間際にはWTB高本とむ(3年)のトライなどで28-12で試合を折り返した。

 

 後半3分に吉村のPGで3点返されたが、6分にPR上杉太郎(3年)が斜めに走り込んで抜け出すトライでリードを広げる。11分にはスクラムで相手から反則を誘い、アドバンテージでアタックを続行。高本幹也が個人技で魅せた。敵陣中央でボールを持つと、ショートパントで裏に抜け出す。迫ってきた相手をハンドオフで制し、ステップでまた1人とかわす。最後は2人がかりで止めにきた相手の間に割って入るようにゴールポスト下に飛び込んだ。自らコンバージョンキックを決めて、25点差に広げる。

 

 帝京大はさらにFWで圧倒する。18分は相手ボールのスクラムで押し勝ち、ミスを誘う。こぼれ球を拾ったSH宮尾昌典(2年)にもプレッシャーをかけ、奥井がインターセプト。そのままインゴール右中間に飛び込んだ。「みんながスクラムを押してくれた結果」と奥井。24分に途中出場のLOダアンジャロ・アスイ、35分には青木にもトライが生まれ、試合をほぼ決定付けた。

 

 その後もトライを重ね、終わってみれば73-20の圧勝だ。大学選手権決勝最多得点を塗り替えた。早大の大田尾監督は「相手のアタックが始まるとボールを取り戻せなかった」と完敗を認めた。一体となっていたのはスクラムだけではない。個人としても両軍最多の28得点を挙げた高本幹也が言う。「強いFW、支えてくれるBK陣もいる。その支えがあって(決勝の)最多得点がある。FW、BKに感謝したい」。V9時代を彷彿とさせるFWもBKも強い帝京大がピッチにいた。

 

 表彰式後、巨体の相馬朋和監督が11度も宙を舞う。10度の大学選手権優勝は岩出雅之監督時代のもの。今季から岩出前監督から引き継いだ教え子の相馬監督は胴上げの瞬間、次のような想いが去来したという。
「横に岩出先生がいて、スタッフも今まで通りサポートしてくれていた。学生たちは毎日努力を積み重ねた。自分は監督として何をしたんだろう、と」
 就任1年目で達成した大学日本一。圧倒的な強さを誇ったが、「私の成長が止まればチームの成長が止まる」と気を引き締めた。

 

 この日の決勝メンバーの4年生は23人中8人。主将の松山千大、高本幹也、CTB二村莞司をはじめBK陣は卒業するが、奥井、青木、江良らFWの主力は多く残る。2009年度から17年度まで大学選手権9連覇を果たした帝京大。再び絶対王者の道を歩むのか。松山は「どれだけ相手よりハードワークできるかが大事。それは3年の江良や奥井たちが分かっているから大丈夫だと思います」と後輩にエールを送った。

 

 4月から最上級生となる奥井は、先輩からのバトンを受け取った。

「先輩たちが勝つ帝京大をつくってくれた。そこを切らせないようとしていけないとは思いますが、まずは目の前の1つ1つをやっていくことが大事。今年のチームも前年に優勝して、ひとつひとつ自分たちがやるべきことをコツコツと丁寧にやり続けて今日の結果が得られた。先を見過ぎずに目の前の一瞬一瞬に目を向けてやっていきたい」

 

(文・写真/杉浦泰介)

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