今季ここまで無敗（３勝１分け）のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ（Ｓ船橋・東京ベイ）は「NTTジャパンラグビー リーグワン2022-2023」第５節で、コベルコ神戸スティーラーズ（神戸Ｓ）を迎える。前節に続き、東京・江戸川陸上競技場（江戸陸）でのホストゲーム。19日には第５節に先発予定のCTBライアン・クロッティがオンライン取材に応じた。
ニュージーランド代表（オールブラックス）48キャップを誇り、同国のクルセイダーズでスーパーラグビー３連覇を経験しているクロッティ。優勝を義務付けられるチームのジャージーを纏ってきた男の目に、快進撃が続くＳ船橋・東京ベイはどう映るのか。「クボタという会社が“成長したい”というマインドを持っている。組織の上の方から変わっていった。そうしたポジティブな変化が現場にも反映されているのだと思う」。親会社を含めたパートナー企業のバックアップ抜きには現在の進化は語れないということか。
かつて石川充GMも「よく勝つ文化、勝つ伝統と言われますが、HCのフラン（・ルディケ）に就任当初から『正しい文化と正しい環境をつくり、正しい行動をすることがチームを強くする』と言われ続けました。その“正しい”の基準をチームでしっかりつくることできたことが好成績に繋がったんだと思います」と語っていた。今季で７シーズン目を迎えるルディケHC体制だが、就任当初はなかなか結果も出なかった。「我々が目指す“正しい文化”をつくるには、時間がかかると思っていた。時には我慢も必要で、そこは中長期的な視点を持ってやらないといけないと考えていました」（石川GM）。フロントが１、２年で見切りをつけていたら今の躍進はなかったと言えよう。
チーム一丸となれているのはフロント、選手・スタッフ間だけではない。Ｓ船橋・東京ベイは、選手、スタッフだけでなくファンを含めたチーム関係者を総称して“オレンジアーミー”と呼ぶ。オレンジのシャツを纏ったチームの一員はビジターの試合にも詰め掛ける。FLピーター“ラピース”ラブスカフニが「オレンジアーミーはエナジーを生んでくれる。アウェイゲームでもたくさんの人たちが来てくれて、グラウンドでもそれを感じることができた。そのおかげでパフォーマンスも全体的に上がった」と感謝すれば、SH藤原忍も「（第２節の）大分、（第３節の）大阪と、どこに行ってもオレンジアーミーがいることに驚きました。本当に心強い存在です」と口にしていた。
クロッティも「オレンジアーミーたちはリーグでベストのファンだと思っている」と言い、こう続けた。
「彼ら、彼女らの応援はすごい。チームの一員、ファミリーの一員。個人としても応援してもらえることはとても光栄です。そのことを当たり前ではないと思っています」
ネルソン市出身の34歳は気さくなキャラクターで知られ、ファンサービスにも熱心だ。そのことについて聞くと、「ファンの人たちとの繋がりを楽しんでいる」と答えた。
ここまで２季連続で新人賞を輩出しているＳ船橋・東京ベイ。今季も４試合で６トライのWTB木田晴斗をはじめ若手の活躍が目立つ。「若手がチャンスをモノにしている姿を観ていてうれしい。出たら出たでいいパフォーマンスを見せるのはいいチームの文化だと示せていると思う」。経験豊富なクロッティは指南役に回ることもあるだろう。
「ラグビーのことを話すこともあれば、それ以外のこともある。若手にアドバイスできることはシニアプレーヤーとして光栄。チームは選手同士も仲が良くオフフィールドでも一緒に過ごしている。聞きやすい関係でいられていると思う」
若手、中堅、ベテランのバランスも良くチームは３勝１分けと好調なスタートを切っている。「今年に入っていい勢いできている。今週の土曜日もチームが成長する姿を見せたい」。クロッティ自身、オンフィールドではセンターとしてオールラウンドな活躍を見せる。攻守で気の利いたプレーはいぶし銀の働きだ。今季はここまで４試合中３試合がリザーブ登録。前節初スタメンでフル出場を果たした。「どんなポジション、立場であれ、チームにとって何が一番大事かを考える。ベンチだろうとメンバー外だろうと、チームファーストで貢献したい」。神戸Ｓ戦は13番を背負い、スタメンでチームを支える。
２日後に迎えるホストスタジアム江戸陸２連戦目は、橙色ではなく黒のスペシャルジャージー（写真）で神戸Ｓを迎え撃つ。オフィシャル・アパレルパートナー契約を結ぶ「BLK」とのコラボ企画だ。元オールブラックスのクロッティはこう感想を述べた。
「とてもクールだよ。昨季もSDGsのスペシャルジャージーを着た。いい取り組みだと思う。今回のオールブラックス色のジャージーもナイス。自分にとっても馴染みのある色なので、そういうところもエンジョイできたらいいね」
（文／杉浦泰介、写真／©クボタスピアーズ船橋・東京ベイ）