権田修一の“残留”がようやく決まった。

 

 1年でのJ1返り咲きを狙う清水エスパルスは2月1日に昨季J1得点王のチアゴ・サンタナ、チームの中核を担う松岡大起、そして日本代表GK権田修一との契約更新を発表した。エスパルスサポーターはホッと胸をなで下ろしたことであろう。

 

 今冬における欧州主要リーグの移籍マーケットは1月末まで。このタイミングで更新したのは、すなわち欧州移籍を目指していたということ。過去SVホルン(オーストリア)、ポルティモネンセ(ポルトガル)でプレー経験のある権田は3月で34歳になるものの、3度目の欧州挑戦をうかがっていたというわけだ。

 

 先のカタールワールドカップではドイツ、スペイン相手にビッグセーブを披露するなど名を挙げた一人。活躍したから再び欧州に目を向けたのではない。年齢関係なくチャンスがあれば挑戦したい、との意思はずっと心に抱いてきた人だ。ポルティモネンセからの期限付き移籍が完全移籍に切り替わった昨シーズンに話を聞いた際も、「サッカー界ですから、移籍は起こり得ますよ」と語っていた。日本に腰を落ち着けてプレーするんだなと思っていたら、そうではなかった。エスパルスのプレーに集中しつつも、キャプテンとしてチームを束ねつつも、自己革新を常に図っていく意味でも欧州から目を背けたことはなかった。

 

 しかしながら所属先が確定すれば全身全霊でチームのために戦っていくことができるのも彼だ。エスパルスを通じて「クラブの目標達成のために、日々全力を尽くします」と決意を述べている。

 

 ここ2シーズンにわたってプレーしてきたエスパルスに対する思い入れも強い。

 

 彼はこんなことも述べていた。

「エスパルスに来て強く思ったのはサッカーに魅了された町というか、静岡市の多くの人がエスパルスを認知しているということ。スタジアムに来てくれるファン、サポーターだけじゃなくて、町全体が支えてくれている印象が僕にはあります。(中略)

(ホームのIAIスタジアム日本平は)ほかのスタジアムよりも子供の数が多いなって感じます。コロナ禍で移籍してきた僕としてはどんな雰囲気かはっきり分かりかねるところはあるんですけど、サンバのリズムが流れて楽しく過ごせるスタジアムだと思うんです。バチバチした雰囲気じゃないので、まだ来たことがない方もぜひ足を運んでもらいたい。ピッチ上でバチバチやるのは僕ら選手なので」

 

 静岡でのメディア出演やアイスタ(IAIスタジアム日本平)を満員にするプロジェクトに参加するなどエスパルスをより認知してもらおうと、プロモーション活動にも積極的に絡んできた。まずはJ1昇格に向けてピッチ内に全力を傾けなければならないが、「エスパルスの顔」としてのみならず、30周年を迎える「Jリーグの顔」としても期待を寄せたい。

 

 サッカー人気の低下が指摘されてきたなか、カタールワールドカップの戦いによって盛り返した感はある。吉田麻也キャプテンの“大号令”もあってか、オフに選手たちは様々なメディアに登場。なかでも権田はしゃべりもかなりうまいとあって情報番組やクイズ番組などテレビに引っ張りダコで、そればかりでなくファッションショーの「SDGs推進TGC しずおか2023」にもサプライズ出演を果たしている。彼の知名度は急激に上がっているのだ。ワールドカップを様々なところで語ることで日本サッカーの好感度アップに多少なりとも貢献しているのではないだろうか。

 

 サッカー熱を高めていくには、Jリーグの盛り上がりが大切になってくる。これまでJリーグに関心がなかった人を振り向かせていくためにも、権田の力は必要になる。プレーで注目を集めていくことがJリーグファン、サッカーファンの増加につながっていくはず。可能な範囲でJリーグをPRするような発信があってもいいだろう。

 

 エスパルスは今季、J2優勝候補の最右翼と言っていい。権田をはじめ主力選手の流出を最小限に食い止めたことが何より大きい。ぶっちぎりで優勝してもおかしくないほど戦力は整っている。

 

 2023年シーズンのJ2は2月18日に開幕する。清水はホームのアイスタに水戸ホーリーホックを迎える。権田のプレーに、一挙手一投足に、注目が集まることは言うまでもない。


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