2023年シーズンのJリーグがいよいよ開幕する。それもオープニングマッチで昨季王者の横浜F・マリノスと昨季2位で20、21年シーズン2連覇の川崎フロンターレがいきなり激突。他カードに先駆けて2月17日の“金J”において等々力競技場でぶつかることになる。

 

 筆者は今シーズンも優勝はこの2強のマッチレースと読む。ここ6年間、フロンターレが4度、F・マリノスが2度と両者が優勝を分け合っており、昨季の勝ち点もF・マリノス「68」、フロンターレ「66」と3位以下に10差以上離している。F・マリノスは昨季MVPの岩田智輝をはじめ仲川輝人、高丘陽平(バンクーバーへの移籍濃厚)、レオ・セアラら、そしてフロンターレは先のカタールワールドカップでも活躍した大黒柱の谷口彰悟、知念慶らが抜け、主力選手の退団が痛手であることは間違いない。ただ両チームはスタイルがしっかり確立されてあり、補強にしてもチームの戦術にフィットする選手を招き入れている。戦力的に思いのほかダメージは少ないのではないかというのが私の見立てだ。他チームとの差が、この1年で埋まるとはちょっと考えにくい。

 

 F・マリノスとフロンターレ、どちらが優位かと言えば現時点で前者だと考える。昨季はローテーションを回して多くの選手を起用しながら勝っており、選手の激しい出入りはもはや慣れたものだろう。逆にフロンターレは守備の統制やビルドアップにおいて谷口の存在があまりに大きかっただけに、「谷口ロス」をどう克服していくかが奪冠のカギを握ることになる。

 

 両チームの注目選手を3人ずつピックアップしたい。

 

 フロンターレの1人目は車屋紳太郎だ。谷口の抜けた穴を埋めるのは彼しかいない。熊本・大津高、筑波大と谷口の直属の後輩であり、その高いポテンシャルは誰もが認めるところ。対人に強く、スピードもあって足もとの技術もある。30歳になり、リーダーシップをより発揮していけばセンターバックとして覚醒する期待感が漂う。

 

 2人目は10番を背負う大島僚太。ずっとケガで苦しんできただけに、彼が1シーズン働くことができればそれだけでチームの大きな上積みになる。狭いスペースをこじ開けていくフロンターレのスタイルを表現するには彼のアイデアとテクニックはマスト。車屋と同じ30歳、チームの中心として引っ張ってもらいたい。

 

 そして3人目はレンタルバックのストライカー、宮代大聖である。一昨年は徳島ヴィルティスで7得点、昨年はサガン鳥栖で8得点とJ1でゴールを積み上げて満を持しての復帰だ。レアンドロ・ダミアンはオフに手術をした影響で出遅れ、小林悠も1月にケガで離脱しており、1トップの先発には開幕戦から宮代が名を連ねるはずだ。フロンターレの育成出身だけに、このサッカーに合わないわけがない。

 

 サガンでプレーした昨シーズンに印象深いゴールがある。

 

 9月16日、ホームでの鹿島アントラーズ戦。前半34分、宮代はペナルティーエリア前でパスを受けると浮かせて前を向き、相手をフェイントでかわしてから左足でゴール右隅へと流し込んだ。「止める、外す、蹴る」の技術が詰まったファインゴールであった。どんなパターンでもゴールできる強みが彼にはある。フロンターレの命運はこの宮代に懸かっていると言ってもいい。

 

 一方のF・マリノス、1人目はオビ・パウエル・パウンナだ。正GK高丘に海外移籍が浮上してチームを離れたため、11日の富士フィルムスーパーカップ(対ヴァンフォーレ甲府)に先発。好セーブを見せるなど開幕スタメンの座を引き寄せるパフォーマンスであった。元々セービング能力が高く、課題は足もとの技術とされてきた。GKもビルドアップにかかわる比重が多いチームだけに、この部分でのレベルアップは欠かせない。ヴァンフォーレ戦ではヒヤリとする縦パスはあったものの、その度胸はむしろ評価したい。

 

 2人目はプロ2年目の山根陸だ。

 

 F・マリノスのボランチは喜田拓也、藤田譲瑠チマ、渡辺皓太と高いレベルの選手がそろうなか、出番を増やしていきそうな気配がある。昨シーズンも高卒1年目の選手とは思えないほど落ち着いてプレーしていてミスも少ない。ターンのうまさはホレボレするほどで、山根がアクションを起こせばチャンスになるという認識がチームにはある。プロの水も慣れてきた2年目は大きく飛躍するのではないか。

 

 そして3人目は角田涼太朗である。読み、駆け引き、ポジショニングに長けたインテリジェンスを感じさせる左利きのセンターバックだが、攻撃性にも富む。それを証拠にスーパーカップではドリブルでスルスルと持ち上がってアンデルソン・ロペスに縦パスを送ったところから決勝点が生まれている。

 

 F・マリノスもフロンターレも、やはり層が厚い。誰かが抜ければ、誰かが活躍する土壌がある。

 

 2・17開幕戦をどちらが制すか。今シーズンを占う重要な一戦になる。


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