「NTTジャパンラグビー リーグワン2022-2023」は第6節を終了し、ディビジョン1は昨季のトップ4が上位に顔を並べている。ここまで旋風を巻き起こしているのが、ディビジョン2からの昇格組・三菱重工相模原ダイナボアーズ(相模原DB)だ。得点数の多さ、失点数の少なさは下から数えた方が早い。トライ数に至ってはリーグ最小タイでありながら6位につけている。快進撃を見せる猪軍団は、キャリアやキャラクターなど個性派揃い。チーム最年長38歳、ジャパン通算2キャップを誇るHO安江祥光もそのひとりである。

 

 安江は帝京高校、帝京大学、日本IBMビッグブルー(現・BIG BLUES)、神戸製鋼コベルコスティーラーズ(現・コベルコ神戸スティーラーズ=神戸S)を経て2016年度から相模原DBに加入した。今季は第6節までの全試合に出場し、主にリザーブで、流れを変えたり、ゲームを締める役割を任されている。

 

 年齢は数字でしかない――。そう感じさせるほど充実しているように映る。本人は冗談交じりに「若いヤツにケツ叩かれながらやっています」と言うが、要所要所での仕事ぶりは目を見張るものがある。同じベテランHOでも埼玉パナソニックワイルドナイツの堀江翔太のような派手さはないかもしれないが、随所に効果的なプレーを披露する。今季初先発となった第6節、東京サントリーサンゴリアス(東京SG)戦では24分にジャッカルで相手のペナルティーを誘った。向こう傷を恐れない――。鼻付近に負った傷跡もどこか誇らしげに映った。

 

 安江は在籍7季目となるが、チームは今季大幅に選手を入れ替えた。主力のCTBマイケル・リトル、SOコリン・スレイドらが抜け、戦力ダウンが懸念されていた。7月に始動した時点ではオーストラリア代表59キャップのSO/CTBマット・トゥームア、同キャップ3キャップのCTBカーティス・ロナ、元イングランドU20代表のSOジェームス・シルコックらは合流していなかった。にもかかわらず今のチームには、一体感が滲み出る。

 

 第5節、ホストスタジアムの神奈川・相模原ギオンスタジアムで行われた静岡ブルーレヴズ(静岡BR)戦は、相模原DBのチームカラーが色濃く表れた試合だった。スクラムを中心としたセットプレー、ブレイクダウンで優位に立ったのは静岡BR。相模原DBは先制点を奪われ、試合の大半をビハインドで過ごした。それでも負けなかった。終盤は攻め続け、終了間際のトライで引き分けに持ち込んだのだ。試合後、安江もこう胸を張った。
「我々としましては、ハードワークが身になってきていると感じます。後半からしっかり巻き返すだけの強度で僕らも走っている。80分間、むしろ90分間戦えるくらいの練習をずっとしてきています」

 

 今季からチームの指揮を執る(昨季はAC)グレン・ディレーニーHCの下、「吐く人もいれば、足をつる人もいた」(キャプテンのSH岩村昂大)というほどのハードなトレーニングを夏から積んできた。それが終盤の粘り強さを支えているのだ。第4節の東芝ブレイブルーパス東京戦でも最大12点差をひっくり返し、一度は逆転されたものの、終盤に得点を加えて23-19で競り勝った。この試合も押された時間の方が長かったかもしれない。安江は「80分間が終わった時に笑っていればいいんだという自信にも繋がってますし、それが我々のDNA」と口にする。
「どこのチームよりも走っていますし、どこのチームよりも厳しい練習をしている自信がある。そこから生まれてくるチームの一体感は、やはりああいう厳しいところで出てくるんじゃないかな、と。1年間戦っていくんだという一体感は、我々はどこのチームよりも強いんじゃないかなと感じてます」

 

 一体感が伝わってくるのはピッチの上だけではない。チームを後ろから支えるのは、ダイナメイト、ウリボアーズ(小学生以下のファン)と呼ばれるスタジアムをチームカラー&相模原カラーの緑に染めるファンたちだ。そして、その日はピッチに立てないノンメンバーも23人の選手たちの背中を押す。“ターボス”と呼ばれる仲間たちについて、安江はこう語っている。
「我々のメインの会社で作っているエンジン&ターボチャージャーがあるので、チームに爆発的なパワーを生み出してくれるという意味が込められています。ターボスの底上げという部分がしっかりしているので、一体感が生まれる。全員で70人近くの選手がいるのですが、その中で試合に出る選手はターボスからターボチャージャーをもらってゲームに臨んでいる。彼らの前で不甲斐ないプレーはできません」

 

 相模原DBは前節の東京SG戦に敗れ、順位は6位に落ちた。今季の勢いを減速させないためにも連敗は避けたい。次節はホスト相模原ギオンスタジアムでの神戸S戦。順位は相模原DBの2つ下の8位だが、トップリーグ2度、日本選手権10度優勝の名門である。前回の対戦(2021年トップリーグ・プレーオフトーナメント2回戦)では17-50と敗れているだけに一味違う相模原DBを見せつけたいところだろう。古巣との対決となる安江はリザーブ入り。80分間走り続ける相模原DBの“全緑”プレーに、そして後半から登場するベテランHOに注目である。

 

(文・写真/杉浦泰介)