今年3月に開業予定の北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールド北海道」(北広島市)のファウルゾーンのサイズが、公認野球規則の基準を満たしていないとして物議をかもした一件は、来シーズンと再来シーズン終了後に改修することで、収束の目処が立った。

 

 

<この原稿は2023年2月号『経済界』に掲載されたものを一部再構成しています>

 

 

 機構と12球団による実行委員会が問題視したのは、本塁からバックストップ(バックネット)までの距離。公認野球規則によると、「60フィート以上」(約18メートル)となっているが、新球場のそれは15メートルしかなかった。

 

 それにしても、なぜ、こんな初歩的なミスが起きてしまったのか。それは日本ハム球団が日本の野球規則を読み込んでいなかったからだと思われる。

 

<今回、エスコンフィールドHOKKAIDOの設計を担当した米国設計会社HKS社[本社:アメリカ・テキサス州]より、米国の公認野球規則(OFFICIAL BASEBALL RULES)に準じたMLBにおいては問題がない旨の説明を受けました。OFFICIAL BASEBALL RULESの原文を確認し、本塁からバックストップまでの距離として記載のある60フィートは推奨(recommend)と解釈しました。>(『北海道日本ハムファイターズHP』2022年11月14日更新)

 

 野球の本場・米国において、本塁からバックストップまでの距離は、元々は90フィート(約27メートル)だったという。それが現在の60フィートに短縮されたのは1931年のことだ。当時は「should be」と記されていたが、50年代に入って「recommend」に変更されたと言われている。

 

 現在、メジャーリーグ30球団の本拠地のうち「60フィート以上」を充たしているのは、わずかに2つ。ルールは完全に形骸化している。

 

 逆に後発の日本は今も「should be」のままであり、「recommend」に改定しようという動きは見られない。

 

 一部に「本塁からバックストップまでの距離を短くすると、後ろの観客が危ない」という声もあるが、地方球場はともかく、どの本拠地球場にもバックネットが張り巡らされており、事故のリスクは少ないと思われる。

 

 メジャーリーグの球場において、本塁から観客席までの距離が近いのは、観客に臨場感を味わってもらいたい、という球団側のサービス精神が背景にある。市場規模で、NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)やNBA(ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)の後塵を拝するメジャーリーグの危機感の表れ、ととらえることもできる。

 

 日本においてもプロ野球がプロスポーツの“1強”だった時代は、とうに終わりを告げている。仮に今年と来年、3メートル短いエスコンフィールドに観客の支持が集まるようなら、“容認”するという手もあるのではないか。柔軟な対応が求められる。

 


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