「NTTジャパンラグビー リーグワン2022-2023」ディビジョン1第9節が25日、各地で行われた。リコーブラックラムズ東京(BR東京)が花園近鉄ライナーズ(花園L)を64-10で破った。BR東京は連敗を4でストップ。花園Lは開幕から9連敗となった。

 

 連敗中のチーム同士の対決は、東京・駒沢オリンピック公園総合運動競技場でのホストゲームで一体となったBR東京が制した。

 

 試合開始早々に左ラインアウトのモールからトライを挙げ、幸先良く先制した。リーグワン初先発となったHO佐藤康の初トライだ。「チームが勝つのが第一。自分がというよりはチームが先制点を取れたことがうれしかった」。成長著しい2年目(昨年4月入団)、実質ルーキーの23歳は頬を緩めた。FBマット・マッガーンがコンバージョンキックを成功し、7点をリードした。

 

 しかし、BR東京の悪癖とも言える規律の乱れが生じる。リーグワンワースト127個の反則。1試合平均15.9個では、なかなか自分たちのペースで運べないだろう。前節の東京サントリーサンゴリアス(東京SG)戦では20個の反則を犯した。8分にPGを決められ、10分にはトライを許すなど7-10と逆転された。18分からの約3分間、反則が相次いだ。前半は我慢の時間だった。反則は犯したが、それ以上の得点は許さなかった。

 

 ペースを相手に掴ませなかったのはセットプレーで優位に立ったことだ。31分に敵陣での相手ボールスクラムで押し勝ち、SHウィル・ゲニアのミスを誘った。ボールがこぼれたところをSH山本昌太が見逃さず、逆転トライを挙げた。「FWのプレッシャーがすべて。FWのトライ」。マッガーンのコンバージョンキックが決まり、14-10で前半終了のホイッスルを聞いた。

 

 ハーフタイムではすぐにロッカールームに戻らずピッチ上でハドルを組み、修正点を話し合った。「『ディシプリンしっかり守ろう』『もう一回コネクトしよう』と声を掛け合いました」と佐藤。ゲームキャプテンの山本はこう振り返る。

「前半どうして自分たちにプレッシャーがかかっていたのか。ペナルティーが続いた場面でレフリーとコミュニケーションを取り、自分たちの現状を知った。“じゃあ、どうする?”と、チームでしっかり話し合い、15人が理解し、実行できたことがペナルティーを重ねなかった後半に繋がった」

 

 苦しい時間を耐え、リードして終えたことも気持ちを楽にしたのだろう。LO柳川大樹は「我慢し続ければ、いずれ相手に穴ができてくる。ペナルティーは反省点ですが、ある程度はウチのプラン通りにできたと思います」と口にする。その言葉通り、BR東京は風上に変わると、一気にペースを掴んだ。後半開始早々に柳川が抜け出してトライを挙げると、これが号砲とばかりにトライラッシュとなった。

 

 7分、14分はラインアウトモールから、インゴールに雪崩れ込んだ。いずれも佐藤がグラウンディングしたように見えたが、7分のトライはNo.8ネイサン・ヒューズに“譲った”。混戦の中、2人がボール付近にいたため判別は難しかった。その一方でピーター・ヒューワットHCは「(場内放送と公式記録で)ヒューズと発表されていたが、もしかしたら佐藤のトライじゃないかな」と所感を述べた。

 

 その後はBR東京が花園Lの守備網を突き破っていく。花園LキャプテンのFL野中翔平は「コリジョン」と何度もチームメイトに訴えていたものの、ソフトなディフェンスが目立ち、BR東京のアタックを止められない。CTB池田悠希、マッガーン、途中出場の湯川純平とシオペ・タヴォ。終わってみればBR東京が計10トライ、64得点を挙げた。後半は花園Lを無得点に抑え、54点差の大勝だ。

 

 山本は「今日はFWで勝った試合だと感じています。ラインアウト、スクラム、モール。FWがよく頑張ってくれた」と勝因を挙げた。そのFWの1人、柳川は先週の反省が生きたという。

「先週は『FWのせいで負けた』と言ってもおかしくない。スクラムのペナルティーが8~10個くらいあった。月曜日に厳しくミーティングをして、自分たちで改善していくしかない、と。今日はそれができたと思います」

 

 柳川の言う「厳しめのミーティング」は埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S船橋・東京ベイ)、横浜キヤノンイーグルス(横浜E)、東京SGと上位陣に4連敗を喫した後に行われた。負けが込んでいる状況では、険悪な雰囲気にもなりかねない。だがBR東京はそうならなかった。山本は「タフなゲームが続く中で、お互い厳しいことを言い合いながらそれでもチームとしてバラバラにならずコネクトし続け、前を向いて準備してきた」と胸を張った。

 

「僕たちはファミリー」と山本は語る。若手の佐藤が「ファミリーだからこそ、ダメな時はダメと指摘でき、それを受け止められる。仲が良いだけがファミリーじゃない」と言えば、ベテランの柳川も「厳しいことを言い合えれば、そこにディシプリンや競争心が生まれてくる。チーム力は高まっていると思います」と話した。

 

 ヒューワットHCは「月曜日の厳しめのレビューをし、それを受けてハードワークをやり続けた結果、みんなが誇りを持てるようなパフォーマンスを見せられた。彼らの頑張りを思うとすごくうれしいです」と選手たちを称えた。今季3勝目はホストゲーム初勝利。次節は3月4日、敵地(千葉・柏の葉公園総合競技場)に乗り込み、NECグリーンロケッツ東葛(GR東葛)と対戦する。

 

(文・写真/杉浦泰介)