早いものでもう2月末です。J1はすでに既に各クラブは2節まで消化しましたが、やはり17日(金曜日)に開催された川崎フロンターレ対横浜F・マリノス戦は見物でした。結果は2対1でしたが、レベルが高い一戦でした。お互い、これまでやってきたことを変化させるというより、今までやってきたことを継続し、成熟させていた印象があります。

 

 結果的に横浜FMが勝利しましたが今季のJ1も昨季同様、この2チームが牽引していくのだろうな、というのが率直な印象です。横浜FMは各選手がしっかりとしたポジションを取り、ポジションを展開しながら相手守備網を綺麗に崩して“あとは押し込むだけ”という形が成熟されています。FWレオ・セアラがセレッソ大阪、FW仲川輝人がFC東京に移籍しましたが、元々個人に頼らずチームとしてセットされたかたちがあるので、選手の入れ替えによる影響は最小限にとどめている点もお見事です。

 

 過去、鹿島アントラーズに所属していた左サイドバック・永戸勝也が生き生きしています。豊富な運動量をいかし、前方のスペースをうまく使っているのはもちろん、ボールが右サイドにある時はかなり内側に位置取り、ゲームメーカーにも似た役割を果たしています。彼のキックの正確性がより相手にとっては脅威になっています。

 

 一方、鬼木達監督率いる川崎F。敗れはしましたがマンネリ化せず、こちらも選手ひとりひとりにゲームプランが浸透しています。選手の役割が明確になっていてなおかつ、本職以外のポジションで起用されてもすぐに順応しています。鬼木政権に入り、今年で7年目。これだけ長期政権だとチームが成熟し切って、成長が頭打ちになるパターンも多い中、厳しい競争の原理を持ち込み、緊張感を維持している監督の手腕には目を細めるばかりです。

 

 さてさて、開幕節には僕の古巣同士の対決もありました。鹿島アントラーズ対京都サンガです。アントラーズはプレシーズンの成績が芳しくなかった。その中で、アントラーズは2対0で勝利を収めたものの、まだまだチームコンセプトをフルに表現しきれていないのかな、と。時折、サイドからペナルティーエリア内にいる選手にパスを当てて狭いスペースでも突破を試みる場面がありました。あれこそフットサル出身コーチの存在意義が垣間見れた瞬間でした。これをシュートまで、ひいては得点につながるようにブラッシュアップしてほしいです。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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