5日、アボット・ワールドマラソンメジャーズシリーズ(WMM)の東京マラソン2023が都庁前から東京駅前の行幸通りまでの42.195kmで行われた。優勝は2時間5分22秒のデソ・ゲルミサ(エチオピア)。2位モハメド・エサ、3位ツェガエ・ゲタウェウケベデとエチオピア勢で表彰台を独占した。日本人最高位は全体7位の山下一貴(三菱重工)で、2時間5分51秒と日本歴代3位の好タイムをマーク。昨年復帰の大迫傑(Nike)は2時間6分13秒で9位、パリオリンピック選考レースのMGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ)出場権を獲得した。

 

 女子はローズマリー・ワンジル(ケニア)が2時間16分28秒で制した。車いすはマルセロ・フグが1時間20分57秒と、マニュエラ・シャーの1時間36分43秒の大会新記録をマークしたスイス勢が男女アベック優勝を果たした。

 

 国内屈指の高速レースが展開される東京マラソン。ペースメーカーが引っ張るレースは、5kmは14分45秒、10㎞通過は29分22秒と2021年に鈴木健吾(富士通)がマークした日本記録を上回るペースを刻んだ。15kmは44分3秒、20kmは58分54秒で通過。先頭集団は25kmを通過した時点でも30人近くで形成されていた。

 

 ペースメーカーが外れる30km地点を1時間28分39秒で駆け抜けた集団は、一気にペースダウン。まず日本歴代10位の自己ベストを持つ井上大仁(三菱重工)が飛び出した。10人くらいの先頭集団はやや縦長に伸びたが、井上は完全に抜け出すことはできなかった。代わりに先頭集団を引っ張るかたちになったのが井上の後輩である山下だった。

 

 途中、脚を休めようと先頭を譲るような動きを見せたが「誰でも出てくれなかった」と、牽制し合う海外勢は山下をかわすことはなかった。しかし、その間にも井上をはじめとして日本人ランナーは1人、また1人と脱落していく。35km通過で先頭集団に残ったのは山下、大迫、其田健也(JR東日本)の3人のみとなった。

 

「35km過ぎで勝利を確信した」というゲルミサ。海外勢は残り5km付近で仕掛けた。日本勢は置いていかれ、“ここからが本番だ”と言わんばかりの展開となった。行幸通り前の最後の直線で3人が並ぶ大接戦。ゲルミサは「どのように勝たなければいけないかを考えていた。相手がスピードあるのもわかっていた。歯を食いしばった」と直線の叩き合いを制し、フィニッシュテープを一番先に切った。ゲルミサはWMM初優勝。今後の目標は「トレーニングを積んで2時間2分台を目指す」と語った。

 

 上位6人までを海外勢が占める中、日本人トップは山下、大迫、其田が争った。一時は大迫が先頭に立つも、余力はそれほど残っていなかった。「上がり切っていなかったので、付かせてもらった。そこから動きの修正ができた」と山下。40km過ぎたあたりで、大迫を置き去りにした。最後は笑顔でフィニッシュ。2時間5分51秒で、昨年の大阪・びわ湖毎日マラソン統合大会でマークした2時間7分42秒の自己ベストを塗り替えた。鈴木健吾、大迫に次ぐ日本歴代3位の好タイムだ。「今後はMGC。日本代表になれるよう頑張りたい」と意気込んだ。

 

(文/杉浦泰介、写真/©東京マラソン財団)